完全なるチェックメイト

完全なるチェックメイト “Pawn Sacrifice”

監督:エドワード・ズウィック

出演:トビー・マグワイア、リーヴ・シュライバー、ピーター・サースガード、
   マイケル・スタルバーグ、リリー・レイブ、ロビン・ワイガート、
   ソフィー・ネリッセ、エヴリーヌ・ブロシュ

評価:★★★




 チェス好きじゃなくとも知っているだろうボビー・フィッシャーを取り上げたのが『完全なるチェックメイト』だ。ただし、伝記画映画ではない。フィッシャーの風変わりな振る舞いは良く知られているところだけれど、彼を見世物にしようという気配は拒否される。焦点が当てられるのは、ソ連の名プレイヤー、ボリス・スパスキーとの対決だ。フィッシャーとスパスキーの戦いは1972年、アイスランドのレイキャビクでクライマックスを迎える。

 そう、冷戦が背景にあり、それがふたりの戦いを一層緊迫感あるものにする。単純なチェスの試合が、国と国の威信を賭けた闘いに変貌する。エドワード・ズウィックはその空気を念入りに描写する。ロサンゼルスやレイキャビク等対戦地の匂いを敏感に集め、同時の風俗を細やかに映し、そこに冷戦の空気を混ぜ合わせる。

 とりわけ感心するのは室内のライティングだ。ランプの光に頼っているようなか細さと妖しさ。それがチェスのボードに絡みにつく感じが良く出ている。ズウィックはどんなジャンルもこなす職人的な監督だけれど、題材の前に演出が出しゃばらないのが良い。

 ポイントを押さえながら慎ましいズウィックの演出の下だからだろう、トビー・マグワイアの大芝居が活きる。マグワイアはほとんど無表情に近い中に繊細な感情を落とし込む俳優だ。けれどここでは、感情の赴くままに行動するフィッシャーの所作を派手に装飾することを恐れない。装飾の裏にある狂気を見誤ることがなければ、若き天才の息遣いを殺すことがないと気づいている。

 脇を固める俳優たちは、マグワイアの演技を引き立てるために抑えに抑えた演技だ。フィッシャーを支える神父役のピーター・サースガード。孤高の戦士スパスキー役のリーヴ・シュライバー。どちらも画面のバランスを分かっている。そしてこういう演技に堪らなく痺れる。

 クライマックスはもちろん、レイキャビクでの世紀の一戦だ。何日間にも渡って行われる対決はフィッシャーのみならず、米ソ両国の関係者の神経を擦り減らしていく。それはそう、スパスキーも例外ではない。試合中のフィッシャーとスパスキーの眼差しが妖気たっぷりだ。スパスキーの優位で始まった試合、フィッシャーが反撃に転じていく過程、それは極限という言葉こそ相応しい。フィッシャーやスパスキーの「一手」の何が素晴らしいのか、それが具体的に見えてこないのは無念だけれど、まあ、凡人は説明されても分からないものなのかもしれない。





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