SAINT LAURENT/サンローラン

SAINT LAURENT/サンローラン “Saint Laurent”

監督:ベルトラン・ボネロ

出演:ギャスパー・ウリエル、ジェレミー・レニエ、ルイ・ガレル、
   レア・セドゥー、ヘルムート・バーガー、アミラ・カサール、
   エメリーヌ・ヴァラーデ、ミシャ・レスコー、
   ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ、ヴァレリー・ドンゼッリ、
   ジャスミン・トリンカ、ドミニク・サンダ

評価:★★




 ある人物が言う。「我々は服を売るだけではない。彼自身を売るのだ」。なるほど彼にはカリスマ性があった。昨今はデザイナーこそ百花繚乱。けれど、本人がスターとして輝いているデザイナーがどれだけいるだろう。流行を生み出すほどのパワーを持つことができるのは、そう、彼のような天才に限られる。『SAINT LAURENT/サンローラン』はファッション界の伝説、イヴ・サン・ローランを追いかける。

 ただし、伝記ではない。60年代後半から70年代半ばにかけて、30代のサン・ローランを描く。ひいきにしているモンドリアン・ルックの誕生がこれ以前なのが悔しい。彼はこの時期、絶頂から少しずつスランプへと堕ちていったらしい。アルコールとドラッグに塗れ、作品のアイデアが枯渇していく。アイデアが枯渇すれば、ますますアルコールとドラッグにハマる。抜け出せない負のループ。芸術を生み出す苦労は大抵これだ。

 映し出されるサン・ローランはさながらロックスターだ。このパターンは個人的に苦手だ。アーティストの逃げ道としてあまりに単純。あまりに子どもっぽい。それを作り手も察知したのか、おフランスらしく上品にまとめている。ただし、そのせいで画が単調になる。それを退廃と言い包めようという底の浅い狙いが透けるのもどうか。

 伝説をギャスパー・ウリエルが演じる。「かげろう」(03年)でエマニュエル・ベアールの相手役を務めたときから残酷な美貌が輝いていたウリエル。僅かに老けて人間臭い部分をコントロールできる術を身につけた。今ならサン・ローランのような実在の人物を演じても人形に見えることがない。なるほど容姿もサン・ローランに似せてきている。同題材の先行映画「イヴ・サンローラン」(14年)のピエール・ニネと良い勝負。美しさという点なら断然勝っている。

 ウリエルはその身体から狂気を浮かび上がらせる。凡人には理解し難い言動に走るからではない。その普段の佇まいの中にガラスを抱え、それを美しく反射させるときもあれば、いつ割れるか分からない危うさをちらつかせるときもある。メガネの向こうに見える目がいつ豹変するか、神経衰弱ぎりぎりの感じが良く出ている。

 作り手はそれを活かせない。サン・ローランが体験する地獄が素っ気ないのだ。目指すべきはひょっとして芸術家の迷宮ではなかったか。才能があるゆえに迷い込んでしまうそこでは、常識が通用しない。デヴィッド・リンチの世界のような不可思議な空間を広げることで、その心象をより深く理解できたのではないか。ベッドをヘビが這ったり、ドラッグでトリップしたサン・ローランが恍惚の表情を浮かべながら奇怪に踊ったり、妖しく面白い画はあるのだ。サン・ローランが体験したに違いない生き地獄はきっと、描かれるよりもっと奇々怪々としたものだったはずだ。





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