約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語

約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語 “The Vintner's Luck”

監督:ニキ・カーロ

出演:ジェレミー・レニエ、ギャスパー・ウリエル、ヴェラ・ファーミガ、
   ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、ヴァニア・ヴィレール、
   エリック・ゴドン、パトリス・ヴァロッタ、ジャン=ルイ・スビーユ

評価:★★




 物語は1808年から始まる。舞台となるのは、フランスのブルゴーニュ地方。自分のワインを作ることを夢見るひとりの青年の数十年が描かれていく。…となると、必然的にワイン作りの過程を撮った場面が登場するのだけれど、これがとても詳しく紹介されているのに身を乗り出す。葡萄の苗木の手入れや植え方、寒い時期の守り方、収穫期の歓び、樽に入れた果実の扱い、試飲、ワインの味の表現…といった流れのイチイチが、時系列に沿ってはいないものの、じっくりと切り取られているのだ。こんなに詳細にワイン作りが映し出されることはなかなかないのではないか。眺めているだけでワインが香ってきそうな不思議な画面。

 ニキ・カーロ監督はワイン作りと人生が共鳴し合うところを見つけようとしているものの、こちらの方の味わいはさほどふくよかではない。ワイン作りにまつわる苦労とそれにもめげず夢を追いかける青年の平坦なエピソードの羅列に終始し、ワインバカと言って良いはずの彼の内面がドラマティックなうねりを上げてこない。青年の身に何が起こったのかは理解できても、それによりどう感情を揺さぶられたのかが見えてこないもどかしさ。ジェレミー・レニエが農夫スタイルにピタリとハマり、その懸命な姿には土の匂い、果実の匂い、ワインの匂いが漂っているのに、なんと勿体無い。

 ただ、青年の人生に「天使」が何の違和感もなく紛れ込んでいるのには感心した。天使が出てくる大抵の映画は、天使にポイントを置いてキワモノ的扱いになることがほとんど。全編がファンタジーになっている場合は別にして、特殊な存在として描かれる。ところがここでは、天使が他の登場人物と同じ空気を吸っている。妻や子どもたち、ワイナリーのオーナーたちと並列に語られる。天使役のギャスパー・ウリエルの端正な顔立ちも効いているし、手作りの羽根も微笑ましい。

 尤も、レニエとウリエルの関係にゲイ的要素を絡めるのはやめて欲しかった。ワインを通じて精神的な結びつきを強めていくふたりの関係に、男同士の絆以上のものを狙っているのが透けて見えるのが白々しく感じられる。ウリエルの意外に逞しい上半身をチラチラ見せる程度に抑えておけば良いのに、過剰なじゃれ合いは別の映画でも観ているみたい。

 レニエは女とのラヴシーンで本領を発揮する。と言うか、青年はワイン作りに貪欲であると同時に、性欲を隠そうとすることもしない。葡萄畑でケイシャ・キャッスル=ヒューズをいきなり押し倒して唇を押し付けるのも、立ったまま下から突き上げるのも、ヴェラ・ファーミガとの営みで腰を揺らめかせるのも、本能の趣くままという感じがよく出ている。笑ってしまうくらいに。これぐらいの性欲がないと、良いワインもできないのかもしれない。そんなわけないか。

 ワインには上品なアルコールというイメージがあるけれど、『約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語』を観ると、野性的な側面を具えていることがよく分かる。物語に感じ入るところはあまりないものの、ワインの見方を変える魅力を持った映画だ。





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