ある神父の希望と絶望の7日間

ある神父の希望と絶望の7日間 “Calvary”

監督:ジョン・マイケル・マクドノー

出演:ブレンダン・グリーソン、クリス・オダウド、
   ケリー・ライリー、エイダン・ギレン、ディラン・モーラン、
   イザック・ド・バンコレ、M・エメット・ウォルシュ、
   マリー=ジョゼ・クローズ、ドーナル・グリーソン

評価:★★★




 原題の「Calvary」はエルサレム郊外、イエス・キリストが十字架にかけられた丘の名を指す。ゴルゴダの呼び名の方が有名か。また、それが転じてか、「受難」や「試練」「精神的苦悩」という意味もある。なるほどブレンダン・グリーソン演じる神父を形容するのに的を射ている。何しろ物語の冒頭、懺悔室でいきなりこんな告白をされるのだ。「子どもの頃神父に何度もレイプされた。その神父は既に死んでいる。だから代わりに良い神父であるお前を殺す。悪い神父を殺してもニュースにならない」。

 ポイントは懺悔室での告白は人に漏らしてはいけないということ。おそらく神父はその人物の正体が分かっているのに、それを警察に告げることも、自ら先手を打って行動することもできない。つまり善良で真面目な神父はいつも通り、アイルランドの海の傍の寂れた村に住む人々と接するしかない。

 当然のことながら神父も人間、精神的に追い詰められる。ところがこれはジョン・マイケル・マクドノー映画だ。スリラー要素はほとんど排除され、コメディとして見せることにこだわる。マクドノーは行間がたっぷり取られたセリフを並べて癖のある会話を作り、かつ信頼するブレンダン・グリーソンを主演に迎える。

 冒頭4分間近く、懺悔室のグリーソンの顔をアップで捉えたショットで通す。マクドノーはそれだけで画面が面白くなることに気づいている。グリーソンは一見強面が前面に出る風貌だけれど、毒を多めに注いでも持ち堪える度量と馬力を具えた俳優だ。コメディの間も難なく物にし、かつそこに複雑な神父の心象風景を滑り込ませる。揺らいでいく信仰心を含めた神父の心模様が、可笑しみと合体した苦悩と共にせり上がる。これはかなり上等な技だ。

 クセの強い村の人々がグリーソンの苦悩を深めていく。自殺未遂をした娘。ワイン泥棒。家庭内暴力。パートナー公認の不倫。銃の所持。名画への小便。凶悪犯の告白。人を殺したいがための軍隊志願。教会の火事や愛犬の絡んだ事件も起こる。事態は深刻を辿り、しかしそこにはアイルランドの曇天下、冷たい空気と密着した笑いが存在感を増していく。グリーソンがそれに必死に抵抗する様、それこそが見ものだ。

 繰り返す。主人公は善良で真面目だ。それにも関わらず、村人たちから歓迎された存在とは言い難い。その気配がどんどん濃くなる。それと共に神父もまた人間である事実が露わになる。これは人間という生き物の業を暴き出す映画でもあるのだ。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ