黄金のアデーレ 名画の帰還

黄金のアデーレ 名画の帰還 “Woman in Gold”

監督:サイモン・カーティス

出演:ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュール、
   ケイティ・ホームズ、タチアナ・マズラニー、マックス・アイアンズ、
   チャールズ・ダンス、エリザベス・マクガヴァン、ジョナサン・プライス

評価:★★★




 ジョージ・クルーニー監督の「ミケランジェロ・プロジェクト」(14年)にはナチスが強奪した絵画や骨董品等の美術品を取り戻す人々が描かれていた。『黄金のアデーレ 名画の帰還』の主人公老女は1998年、戦後オーストリアの美術館に飾られたグスタフ・クリムトの名画は、ナチスにより自分の生家から奪われたものだと訴える。老女が相手にするのは国だ。両者の主張は平行線を辿る。こんな興味深い実話があったとは、なるほど、映画界が放っておくわけがない。

 アメリカに命からがら逃れてきた老女が新米弁護士に仕事を依頼し、見事絵を取り戻すまでが描かれる。時折フラッシュバックで老女の思い出(記憶と呼ぶ方が相応しいか)が挟まれながら。実のところ、脚本は甘い。この題材ならば、ちっぽけなふたりの人間がいかにして国というあまりにも大きな相手に勝ち得たのか、その紆余曲折を探るところに力点が置かれるべきなのに、一向にそちらに興味を示さないのだ。

 いや、もしかしたら実話ベースゆえに、それほど面白いネタが転がっていなかったのかもしれない。奇抜なアイデア、無謀な戦略、一か八かの賭け…等は見当たらない。ほとんど勝負は正攻法だ。その代わり、困難にぶつかっても、一旦は諦めても、そこから這い上がる「人の強さ」を称えることに熱心だ。けれど、こういうものはちゃんとした下地(ここでは勝つための周到な準備と思いがけない幸運)が敷かれてこそ映えるというものだ。

 脚本は裁判の家庭の要所要所で丁寧に悩む人々の姿を見つめる。セリフは説明的で、編集は機械仕掛けのように味気ない。画面が単調になりそうになると、決まって過去に戻り、ナチス絡みのサスペンスを放り込むのも安易と言える(ただし、しっかりドキドキハラハラはさせる)。老女の過去の傷や名画に固執する理由も腑に落ちない。

 ところが、ここまで欠点が露わになっていながらなお、ほとんど退屈することがない。老女をヘレン・ミレンが演じているためだ。ピンと伸びた背筋。美しく刻まれたしわ。きびきびした物言い。気品あふれる着こなし。とにかくカッコイイ。

 そう、ミレンはカッコイイ。それが同世代の女優と較べてまるで違うところだ。辛辣なユーモアと未だ枯れない色気が一緒くたになり、かつそこに長い人生を生きてきた経験がブレンドされ、その佇まいには本物の自由が感じられる。それが唯一無二の強烈な個性を創り出す。頑丈な演技力だけではどうにもならないものをミレンは獲得している。カッコイイというのはそういうことだ。この映画はそういうミレンの魅力を切り取ることに成功している。物語云々より、ミレンのアイドル映画として価値があるのだ。





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