パリ3区の遺産相続人

パリ3区の遺産相続人 “My Old Lady”

監督:イスラエル・ホロヴィッツ

出演:マギー・スミス、ケヴィン・クライン、クリスティン・スコット=トーマス、
   ステファーヌ・フレス、ドミニク・ピノン、ノエミ・ルヴォフスキー

評価:★★★




 フランスには古くから「ヴィアジェ」と呼ばれる独特の不動産売買システムがあるのだという。不動産を売却しても、売り主は死ぬまでそこに住むことができ、かつ買い主は売り主が死ぬまで毎月一定額を年金のように払い続けなければならない。買い主は売り主が一刻も早く死ぬよう、丑の刻参りでもするかしかない。

 『パリ3区の遺産相続人』では、疎遠だった父の遺産であるパリのアパルトマンを引き継いだ買い主ケヴィン・クライン、不動産を売ってからも長々住み続けるマギー・スミス、その娘で絶賛不倫真っ只中のクリスティン・スコット=トーマスの物語。当然クラインはスミスから完全に不動産を頂戴することを願い、スミスはくだばってたまるかと元気いっぱい。その様子に可笑しな命が宿る。力のあるキャスト、簡単につまらなくなるわけがない。

 実際、前半快調に飛ばされる。惨めな暮らしから抜け出すべくアパルトマンの売却に全てを賭けるクラインが、すっ呆けたスミスとヒステリックなスコット=トーマスに翻弄される画が愉快。クラインは今なお色気とユーモアの混合体だし、スミスは美しい英語を自在に操り相手を自分のペースに巻き込むのが得意。スコット=トーマスも苛立ちの中に翳りあるおかしみを滑り込ませる。

 ただ後半、バランスが崩れる。クラインの死んだ父とスミスの不倫関係が予想以上に主張して、どろどろの様相を湛え始めるからだ。当人たちはその愛を美化していたらしいものの、ちゃんと周りは傷ついていて、「自殺」などという物騒なキーワードも絡み始める。思い出の一致の難しさを考察し、かなり深く人間の美醜に踏み込む。笑いを犠牲にしてまで、描く価値があったか否か。舞台的臭みも目立ち始める。

 クラインにはもっとおフランス人と絡んで欲しかった。クラインはアメリカ人、スミスとスコット=トーマスはイギリス人。おフランスにいながらにして、彼らとの交流がほんの僅かに限られる。ヨソサマの土地でタニンが無神経にギャアギャア騒いでいる気配がなきにしもあらず。ヴィアジェを取り入れたいがゆえの無理が見える。クラインなんて街の「動脈」に住むオッサンやセーヌ川沿いで歌う女との掛け合いがとても良いのになぁ。

 スミスとスコット=トーマスが暮らすアパルトマンの内装は見もののひとつ。アンティークの家具屋に迷い込んだような趣あり。スミスのパーソナリティに合わせたかのように、素っ気なくも温か味がある。カーテンや食器、ランプ、壁紙、テーブル、椅子…やり過ぎない生活感とベストマッチ。観光名所ではない街角のカッコ良さも目の保養と言える。





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