レディ・ソルジャー

レディ・ソルジャー “Camp X-Ray”

監督:ピーター・サトラー

出演:クリステン・スチュワート、ペイマン・マーディ、レイン・ギャリソン、
   ジョセフ・ジュリアン・ソリア、ジョン・キャロル・リンチ

評価:★★★




 キューバ南東部にはカリブ海に向かって開けたグアンタナモ湾がある。そしてそこにはアメリカの収容キャンプがある。入れられる者の多くは、アフガニスタン紛争やイラク戦争でテロリストとして疑われたアラブ系の人々だという。デミ・ムーア映画のような邦題をつけられた『レディ・ソルジャー』は、その実態を凝視する。

 収容された者たちは「拘留者」と呼ばれる。テロの容疑はかけられたものの、確実ではない。その曖昧さが落ち着かない気分を誘う。「拘留者」という言葉で誤魔化されてはいけない。彼らは囚人のように扱われる。一日の大半を狭く殺風景な部屋、ひとりで過ごす。僅かな楽しみは檻に入れられての運動と変わり映えのしない読書ぐらいだ。決して浮つかない撮影が、単調な毎日から目を離さない。

 単調と言えば、そこで働く人々の仕事もそれを避けられない。自殺者を出さないよう、小さな窓から数分間隔で拘留者を監視し続けるのが基本。食事や本を配ることが小さな気分転換か。拘留者だけでなく、見張りとなる兵士もまた焦燥を覚える。

 それに主人公兵士はクリステン・スチュワート、女だ。周りはほとんどが男たち。そこで働くとはどういうことか、その難しさが浮上する。主人公は女であることに甘えない。しかし、男と女の間に横たわる溝をなくすことは不可能で、下衆な体験を強いられる。21世紀に入っても、生き難さは否定できない。

 スチュワートは拘留者のひとり、ペイパン・マーディと心の距離を縮める。クラリス・スターリングとハンニバル・レクターのように、鉄のドアの小さな窓越しに言葉を交わすふたり。作り手はここに、小さなドラマを見つける。これは賭けだ。生々しい実態の中に作り物めいたドラマが入り込むことで、作品バランスが崩れる危険がある。それを乗り越える力となるのがスチュワートとマーディの演技だ。

 どちらも決して状況が変わらないことを承知し、生活感のない空間の中、それでも素っ気ない会話の中に人間らしさや安らぎを見出す。このともすればメロドラマに堕ちかねない状況下、スチュワートとマーディはぎりぎりの精神状態で生きるふたりの魂に、臭みのない光を当てる。とりわけスチュワートは感情を細い身体に抑え込む感じを良く出している。

 ふたりの心が初めて通い合う場面が目に残る。小さな部屋で暮らす拘留者と彼を見張る女兵士。カメラが捉えるのは、ふたりの顔のアップだ。小さな窓から見える互いの顔。そこには窓の存在が見えない。マーディが愛するハリー・ポッターの魔法でも信じたくなるカットだ。





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