100歳の少年と12通の手紙

100歳の少年と12通の手紙 “Oscar et la dame rose”

監督:エリック=エマニュエル・シュミット

出演:ミシェル・ラロック、アミール、マックス・フォン・シドー、
   アミラ・カサール、ミレーヌ・ドモンジョ、コンスタンス・ドレ

評価:★★★




 神様への手紙を括り付けた風船が空高く飛んでいく場面が何度か出てくる。その度に美しさに息を呑む。撮影だけの力ではない。風船と共に舞い上がる人間の感情が、生きたものだからだ。結局感動を覚えるのは、人間の心。当たり前のことを再確認する。

 難病物は好きではない。障害者を取り上げた映画の大半が彼らの純粋さを崇め奉ることだけに終始するのに似ているのだけれど、難病が関わった映画は死にまつわる泣かせに安易に走り、哀しいがゆえに流れ落ちる涙ばかりにこだわる傾向にある。お涙頂戴、それがいちばんの目的になることが多いのだ。『100歳の少年と12通の手紙』はしかし、それを軽やかに拒否している。涙腺を刺激する場面はあるものの、それは物語を語るためのものであり、その物語が伝えるのはメロドラマなんかではない。安い泣かせドラマとの違いはどこにあるのか。

 まず、たった一人でデリヴァリーのピザ屋をしている女の、余命僅かな少年へのアドヴァイスが効いている。残りの人生が少ないことにショックを受けた少年に女は言う。一日を10年として生きるのはどうか、と。少年は一日に10歳年をとり、それに見合った経験をする。10代になると初めての恋の告白、40代になれば人生の試練を経験する。気にしなければ何の感謝もない一日なのに、たったそれだけで少年の24時間が輝いていく気持ち良さよ。時間という形のないものの尊さが自然に溶け出してくる。

 そう、「自然に」なのがポイントだ。教訓話・説教話という堅苦しさは全然なく、それどころか意外や、ファンタジー要素が入ってくるのが楽しい。それは少年が見る夢だったり、少年と女がスノーボールの中に見る幻想だったり。現実とは違うカラフルな世界。まるでからくり屋敷にでも迷い込んだよう。特にプロレス場面のパロディが愉快で、ふざけ方に芸がある。この味わいがあるからこそ、メッセージが臭くならず、「自然に」溶け出す。

 セリフもイイ。特に少年が神様に出す手紙の文章のイチイチが心に沁みる。最も気に入ったのは「人は年を重ねるほど、人生を味わうためのセンスがいる」というもの。少年は続ける。「若いうちは誰でも人生を楽しむことができるけれど、100歳になって身体が動かなくなったら頭を使わないといけない」。捻り方が最高じゃないか。

 そもそも少年と女が仲良くなる過程の描き方が優れている。少年の周りの人間は親も含めて彼に気を遣う者ばかり。腹を割って話せる相手がいないのだ。そんな折に出会った元プロレスラーの女は、口が悪くて、見るからに病気の少年にもキツイ言葉を次々浴びせ掛ける。普通なら怖くなって逃げ出してしまうところなのに、少年は目を輝かせる。この人なら自分を分かってくれるかもしれない。この人間観察眼!ふたりの掛け合いでは、女が頭を早く回転させて、言葉をリズミカルに畳み掛けるのも小気味良い。しかも毒入り。ミシェル・ラロックの大人顔も役柄にピッタリだ。

 物語の決着は想像通りで、もう少しだけ冒険が欲しかった気もするけれど、ホッとする温もりを感じられるフランス映画だ。





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