ヴェルサイユの宮廷庭師

ヴェルサイユの宮廷庭師 “A Little Chaos”

監督:アラン・リックマン

出演:ケイト・ウィンスレット、マティアス・スーナールツ、
   スタンリー・トゥッチ、ヘレン・マックロリー、
   スティーヴン・ウォディントン、ジェニファー・イーリー

評価:★★




 『ヴェルサイユの宮廷庭師』という響きは妙にファッショナブルに聞こえるけれど、ここに出てくる庭師は現場で率先して泥塗れになるのは当たり前、材木を運び、工具を振り上げ、男たちの中で汗を流すことを厭わない逞しき女だ。ケイト・ウィンスレット、ずばり適役。こんなに力仕事が似合う女優は、「コールド マウンテン」(03年)のときのレニー・ゼルウィガー以来ではないか。

 ただし、ウィンスレットはゼルウィガーと違い、それでもなお物腰に気品を漂わせる。階級が低い者を演じても、気高い心だけは凛として守る。高潔な性質を肉感的な容姿に溶け込ませる。ウィンスレットは殊更自身を飾り立てる必要がない。

 ウィンスレットが演じる庭師は、17世紀フランス、ルイ14世によりヴェルサイユ宮殿の大増築を任された庭園建築家に、野外舞踏会用の円形劇場を担当するよう頼まれる。草木が鬱蒼と茂る空間と泥に支配された大地が交互に切り取られる。グリーンの力を証明する撮影だ。宮廷内部の絢爛豪華な装飾よりも、ここでは鮮やかなグリーンが物を言う。

 アラン・リックマンはここに働く女性の姿を映し出す。今でさえ男女格差が嘆かれる。当時の働く女を見る目は、今もよりもさらに冷たかったことだろう。自分を持ち、仕事は妥協せず、困難に直面しても果敢に切り抜け、けれど女特有の視点を忘れない。ウィンスレットの眼差しと肉体の迫力が活きる。

 リックマンはそれを描くことに集中できなかった。いや、それだけでは満足できなかった。庭が出来上がるまでの物語には様々なテーマが放り込まれる。過去の悲劇とそれによる心の傷。クイーンの死とそれをきっかけに露になる国王の心象。女の陰謀。男の妬み。そしてもちろん庭師ウィンスレットと彼女を起用する建築家マティアス・スーナールツの恋。いずれも深刻な表情のわりにライトな扱い。物語を寄り道させはしても、後には残らない。

 いちばんの見せ場は主役男女の恋愛場面にはない。ウィンスレットとルイ14世役のリックマンがふたりだけで顔を合わせる野外場面だ。ふたりが見せる控えめな掛け合いが、美しい画面の中にしっとりと溶けていく。「いつか晴れた日に」(95年)の頃にはまるで魅力的に見えなかった組み合わせが、約20年の時を経て、ようやく輝き出す。

 物が完成に近づいていく喜びがほとんど感じられないのは大きなマイナスだろう。庭園が少しずつ形になっていくのではない。終幕までほとんど形にならないままだったのが、ラストシーンで突如完璧に美しい全貌を現す。庭もまた、何かのメタファーとするならば、様々な過程を取り上げて欲しかった。





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