ラスト・リベンジ

ラスト・リベンジ “Dying of the Light”

監督:ポール・シュレイダー、

出演:ニコラス・ケイジ、アントン・イェルチン、アレクサンダー・カリム、
   イレーヌ・ジャコブ、アデトミワ・エドゥン

評価:★★




 おそらく企画が始まったときは志高い映画(と言うか、奇想が溢れる映画)だったのではないか。製作総指揮にニコラス・ウィンディング・レフンの名前があるし、監督にはポール・シュレイダーが選ばれている。それにニコラス・ケイジは元々演技派なのだ。ところが物語は、何を見せ場にしたいのか、焦点すら合わせられないまま終わりを迎える。昨今の多くのケイジ映画と同じ棚に並べて良いC級映画、それが『ラスト・リベンジ』だ。

 ケイジが演じるのはヴェテランCIAエージェントだ。あるテロリストに監禁され拷問された過去を持つ。そのテロリストを22年ぶりに見つけ出す。ケイジはテロリストのいるケニアへ飛ぶ。その根底にあるのは復讐心というやつだ。ケイジはアメリカやCIAへの忠誠を大切にしていて、これが事態をややこしくする…という面白くなりそうな材料は見事にスルーされる。ケイジはあっさりCIAをクビになるのだ。残るのは復讐だけ。

 自分に懐いているアントン・イェルチン(生え際がいよいよデンジャラス)の協力を得て、ケイジは行動を始める。ここには「それでも復讐せずにはいられない人間の性」があると見るべきなのだろうけれど、足枷が外されたことでケイジが単細胞にしか見えない。

 それならばアクションで見せ場を作るべきなのに、驚いたことに数えるぐらいしか心拍数を煽る場面がない。上映時間終了間際にようやくケイジはテロリストと対面し、しかしその大半は会話劇に終始する。そう、話はテロリストに辿り着くまでの調査で占められる。そしてもうひとつ、ケイジの焦燥描写だ。

 それを見せるためにわざわざケイジは前頭側頭型認知症という設定がなされる。抑制が欠如し、不適切な反応が多くなり、気性は荒くなり、知覚障害が始まり、そしてもちろん記憶が危うくなる。テロリストもセラセミアという病に侵されている。因縁のふたりは余命幾ばくもなく、しかしなお対決は避けられない。このドラマが盛り上がらないのは、それぞれの病が置かれている状況の説明以外の意味をなしていないからだ。ケイジが酷い過去とその痛み、そしてずっと引きずってきた拷問の苦悩までを忘れてしまいそうになる…なんてサスペンスすらない。

 ケイジが夜のベンチに佇む場面がある。このときのケイジがおじいちゃんにしか見えないのは、さすがの演技力だと讃えるべきなのだろうか。遠くを見つめる目。ぽかんと開いた口。寂しい空気。なるほど空虚感は良く出ている。けれどここには、そんな彼を見続けていたいと思わせるものがない。作り手の役柄への愛情が感じられないのだ。男は見世物ショーの道化役でしかない。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ