アメリカン・ドリーマー 理想の代償

アメリカン・ドリーマー 理想の代償 “A Most Violent Year”

監督:J・C・チャンダー

出演:オスカー・アイザック、ジェシカ・チャステイン、
   エリス・ガベル、アルバート・ブルックス、
   デヴィッド・オイェロウォ、アレッサンドロ・ニヴォラ

評価:★★★★




 ラジオからひっきりなしに聞こえてくるのは、次から次へと起こる犯罪ニュースだ。昨日も今日も、きっと明日も街のどこかで血が流れている。それもそのはず、『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』の舞台はロナルド・レーガン政権下、1981年、冬のニューヨークだ。オスカー・アイザック演じる移民の主人公はここでオイル・カンパニーを立ち上げ、いよいよ勝負に出ようとしている。しかし…。

 もちろん障害が立ち塞がる。輸送車を狙った強奪事件の多発。襲われる従業員たち。家族に狙いを定めた強盗未遂も経験する。大抵の場合、ここで主人公は目には目をと反撃に出る。ところが、アイザックは堅気の姿勢を崩さない。ここが面白い。

 アイザックの愚鈍と取られかねない下半身の重さが効いている。アイザックが守るのは自尊心や高潔さと呼ばれるもので、それらへの頑なな固執は彼が受けてきた波乱万丈の過去を感じさせるのに十分だし、それに忠実であることで、己を、家族を、会社を守ろうとするのにも真実味がある。ただし、切ない。ハートを鷲掴みされるかのように切ない。

 しかもアイザックの思いは、なかなか他の者には通じない。不安定な従業員にも、彼を目の敵にする検察にも、弁護士にも、そしていちばんの理解者であるはずの妻にも…。ジェシカ・チャステイン演じるこの妻は、マクベス夫人を思わせる立ち位置にいる。真面目に健気に、しかし際どい所を大胆に突き進むアイザックの後ろでチャステインが動くことで、良くない空気が振動する。チャステインは実は、ニューヨークを拠点にするギャングの娘でもあるのだ。チャステインがさすがの妙演。

 しかし、自尊心や高潔さだけで持ち堪えられるものだろうか。いつしかそれが、アイザックの焦りと密着する。己の信じるものを貫きたい。けれど、このままでは会社が危ない。焦りは遅効性の毒薬のようだ。じわじわとアイザックの毛穴に入り込み、細胞を脅かし、そしていつしかアイザックを別の人間へと変えていく。前々から目をつけていた土地を手に入れる目前の一カ月前と、苦難に揉まれ続けた一カ月後では、アイザックは同じようで同じではない。

 そうなのだ。この映画は主人公と会社が窮地から脱することができるだろうか…というサスペンスで物語を一突きしながら、けれどそれに寄り掛からない。J・C・チャンダーが揺さぶりをかけるのは破滅の気配だ。ここで言う破滅はマテリアルなところにはない。人間という生き物の中にあるそれを炙り出し、その哀しみを凝視する。どう決断し、どう動くのか。アイザックはその哀れを見事に魅せる。凍てつく空気をまといながらアイザックが悶える様が目に焼きつく。





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