トレジャーハンター・クミコ

トレジャーハンター・クミコ “Kumiko, the Treasure Hunter”

監督・出演:デヴィッド・ゼルナー

出演:菊地凛子、勝部演之、河北麻友子、東加奈子、
   シャーリー・ヴェナード、ネイサン・ゼルナー

評価:★★




 コーエン兄弟の「ファーゴ」(96年)にまつわる都市伝説があるらしい。2001年、ノースダコタで遺体で見つかった日本人女性は、映画の中でスティーヴ・ブシェーミが雪の下に隠した大金入りのブリーフケースが本当にあると思い込み、それを探すうちに凍死したのだという。『トレジャーハンター・クミコ』はそれを下敷きにする。

 ヒロイン像がポイントになる。VHSテープが擦り切れるほど観た「ファーゴ」、それを真実だと信じるだなんて、愚かと言うか狂っていると言うか、とにかく精神状態がまともとは思えない。彼女の浅はかさに狙いを定めるのは容易だけれど、作り手はむしろ、何かに縋りたいその切実な思いを丁寧に撫でる。

 クミコという名のそのOLは、恋人もいなければ友達もいない。人付き合いは苦手で、会社でも居場所はない。片づけられていない部屋でペットのウサギと一緒に死んだように生きる。その彼女がブリーフケースに心の支えを見る。ただそこにだけ真実があることを確信する。それはきっと、現代社会のメタファーでもある。

 ちょっとしたホラーの匂いがあるのが面白い。いかにも覇気がなく、人間関係が頼りなく、会社に行く以外は引き籠っている女。そんな彼女を見つめていたら、思いがけずホラーに近づいてしまった…そんな気配。駄目になったVIDEOテープを全て引っ張り出して、そこに顔をうずめる場面など、そのままホラー映画のワンカットして使えるのではないか。

 いよいよミネソタに渡ってからは、赤いフードを身に着けていることもあり、クミコは迷子の赤ずきんのようだ。言葉が通じず、土地勘もないままに、雪が道を走る極寒の地を彷徨う。その姿に漂う可笑しみが良い味わい。出会う人々は皆親切で、けれど彼女はそれを平気で手放す。日本人の目を通して見ると恥ずかしくも感じられるものの、それよりもそんな風に彼女を動かすことで、真実と虚構の境に揺さぶりをかけている点の方が印象的だ。クライマックス、遂に辿り着くある場所で見せるクミコの表情など、なかなか胸に迫る。アメリカ・パートにもっと時間を割いて欲しかった。

 映画はさながら菊地凛子ショーだ。ぼさぼさの頭。ほぼノーメイク。無表情。気怠い空気。ここに思い込みという名の狂気が加わり、実に危ういヒロインが出来上がった。そして思い込みが真実に近づく瞬間を菊地は見逃さない。ただ、ぼそぼそとしたセリフ回しは…あまり感心しない。現実世界ではこんなものだろうと承知しつつ、こういうのをナチュラルな演技(或いはリアリティがある)と呼ぶのは違うだろう。まあ、菊地に限ったことではないか。日本のインディーズ映画を眺めていると、よく首を傾げる謎だ。





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