Cake ケーキ/悲しみが通り過ぎるまで

Cake ケーキ/悲しみが通り過ぎるまで “Cake”

監督:ダニエル・バーンズ

出演:ジェニファー・アニストン、アドリアナ・バラッザ、サム・ワーシントン、
   クリス・メッシーナ、アンナ・ケンドリック、フェリシティ・ハフマン、
   ウィリアム・H・メイシー、メイミー・ガマー、ルーシー・パンチ、
   ブリット・ロバートソン、ポーラ・ケイル

評価:★★★




 ジェニファー・アニストン、どうやら勝負に出た。『Cake ケーキ/悲しみが通り過ぎるまで』のアニストンは、一見しただけでは彼女と分からないかもしれない。薄化粧は額の皺やほうれい線、肌の乾いた質感等、40代の素顔を曝け出す。二重アゴになる寸前までに増量され、顔にも手足にも蚯蚓腫れがあり、髪はダークカラーに染められ、服装は地味を極める。慢性痛のため、動きは老人のように制限される。たっぷり老け込む。

 外見の変化を「演技」とするのは間違いだ。アニストンは役柄に外見を合わせた上で、その内面に奥行きを与える。過去の不幸な出来事から立ち直れない女。思うように身体は動かせず、そればかりか人に頼らざるを得ない場面が日常的に訪れる。その言動は辛辣なものになり、善良な人々を傷つけることもしばしばある。けれど、それなのに彼女を憎めない。それどころか興味を持たずにはいられない。

 アニストンだ。彼女の俳優としての覚悟が、その実現に大いに貢献する。思うに彼女は役作りのため、その抜群の好感度を利用している。棘のある言動の裏に隠れた本来のパーソナリティをそれと結びつけ、それでもなおどこか可笑しみを感じさせる人物を創り上げている。可笑しみに寄り添った哀しみが忘れられないのは、もちろんだ。

 喪失と再生が飾り立てられないのが良い。映画的な装飾を避け、人と人の生の息遣いが交錯する瞬間の空気に、それを映すことに賭けた画が並ぶ。セックスはしたくない。けれど、ひとりで寝るのは苦しい。そんな状況に追い込まれた女が、あるときから踏み入れていなかった部屋のドアを開ける場面は、緊張と痛みに満ちている。アニストンが息をするのを忘れる名演を見せる。

 暗く沈んだ物語に光が射すことも少なくない。家政婦アドリアナ・バラッザのおかげだろう。アニストンに辛辣に当たられても辛抱強く耐え、それどころか穏やかな視線を崩さない。チープなプリントTシャツが良い味だ。バラッザとアニストンの掛け合いは、言わば微かな希望の種であり、それがゆっくりと育っていく印象だ。ここが貧弱だと、いつか咲くだろう花がみすぼらしいものになる。

 クリス・メッシーナやサム・ワーシントンらによる脇の人物の描写も悪くない。ただ、アンナ・ケンドリック演じる自殺した女との掛け合いは、やや浮き気味だ。現実と地続きとのところでケンドリックと会話する画に作為が滲む。その積み重ねのせいなのか、アニストンが前を向き始める転換点が見え難い。アニストンが作り手の都合により光を見ているように見えなくもない。





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