ベルファスト71

ベルファスト71 “'71”

監督:ヤン・ドマンジュ

出演:ジャック・オコンネル、ポール・アンダーソン、リチャード・ドーマー、
   ショーン・ハリス、マーティン・マッキャン、チャーリー・マーフィ、
   サム・リード、キリアン・スコット、デヴィッド・ウィルモット

評価:★★★




 果たして、新米の英国軍兵士は生きて脱出できるだろうか。まずこれが、シンプルなサスペンスとして物語を一突きしている。脱出劇が映画と相性が良いことは、脱獄映画の例を挙げるまでもなく明らかだ。ただ、兵士の生き残りを賭けた脱出に、多くの脱出劇に具わる爽快感を求めるのは無理だ。舞台は1971年、北アイルランド。『ベルファスト71』は戦争映画と呼ぶのが相応しい。

 当時の北アイルランドではプロテスタント系とカトリック系の対立が激しさを増している。血の日曜日事件前夜と言えば、深刻さも分かろうというもの。IRAという言葉もすっかり毛穴に沁み込んでいる。登場人物は英国人で、しかも大半は一般市民というのがミソだ。

 ヤン・ドマンジュ監督がこの争いに、「戦争」を見ていることは明らかだ。直接的に「これは戦争だ」というセリフもあるけれど、暴力や死というものに対する向き合い方に、それはより顕著だ。ふと笑った次の瞬間に訪れる死。生死がかかったときの冷徹な判断。無残な遺体の様相。

 人々は政治思想ゆえに対立の溝を深くしていく。信念などというものは人の数だけあって当たり前で、誰もがそれを守ろうと思ったら行き違いは次々出てくる。ここでは本来味方であるはずの者たちの関係にも複雑な亀裂が入る。そこに英国軍まで入り込むのだから、事態はますますややこしく、誰と誰が繋がっていて、誰が敵か味方か、分からなくなる不安感が街を支配する。その街の息遣いこそが見ものだ。

 面白いのが主人公の青年は、政治思想と呼べるものを持っていない点だ。彼は命令に従ってベルファストに赴き、そこで孤立し、暴力に晒され、捕えられ、政治の道具として見られ、命は風前の灯火。たった一夜、彼は、身を持って事態の厳しさに絶望する。ジャック・オコンネルの繊細さを感じさせる佇まいが役柄に合っている。鼻は立派で、耳はユニークな形だ。ちゃんと心に残る顔つきなのも良い。

 実は、取り残された青年の行動範囲は、たいして広くない。街の一角で動いているだけに過ぎない。それなのにここは、あぁ、今も続く紛争・戦争の縮図のようだ。ドマンジュは街灯の黄色で街を照らし出す(見事な照明)。無駄口は叩かない。脇道には逸れない。人物は皆、重要な役割を担う。青年は街に迷路を見る。朝が来るとき、青年が冷静に見つめる街はきっと、最初に目撃したそれとはまるで違っている。そう、街は、一日を繰り返す度に、その表情を変える。いや、変えざるを得ない。そこに戦争の過酷さを感じる。





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