ナイトクローラー

ナイトクローラー “Nightcrawler”

監督:ダン・ギルロイ

出演:ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、
   リズ・アーメド、ビル・パクストン

評価:★★★★




 ジェイク・ギレンホール演じるルー・ブルームはとある夜、交通事故の現場でカメラクルーに出会う。彼らは事故や犯罪現場に駆けつけ、スクープ映像を撮ることを生業にしている。ブルームはそれを目指す。『ナイトクローラー』という呼び名が言い得て妙。夜に這いつくばる者、か。映画はナイトクローラーの生態を観察する。

 スクープはそのまま金に直結する。刺激が溢れる世の中。人々はさらに上を行く刺激を求める。TV局はそのニーズに応えるため、放送コードぎりぎりの際どい画を狙う。必然的にスクープへの要求は高くなり、上限が見えない。ナイトクローラーは嬉々として暴走を始める。

 これを現代社会の病理として見るのは簡単だ。「タクシードライバー」(76年)のトラヴィス・ビックルを思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、ダン・ギルロイはナイトクローラーを型にはめ込むのを嫌う。それならばとナイトクローラーの怪物性をロサンゼルスの夜の街に解き放つ。夜行性のナイトクローラーは闇の中で狂気を振り撒き、犯罪を呼び寄せ、創り出し、しかし、自らを輝かせる。

 当初は犯罪現場への不法侵入やドラマティックな演出(所謂やらせ)程度だった「罪」が、徐々にエスカレートしていく。一線を超えるなんてものではない。スクープがあるから駆けつけるのではなく、スクープを操ることに命を賭け始める。もはや後戻りできない暴走で、こうなってしまうと本人も息苦しくなるものなのに、ところが、このナイトクローラーは自身が追い詰められる気配を拒否する。むしろ彼はこれにより生を実感する。

 多くはない登場人物たちの関係が面白い。例えばリズ・アーメドはアシスタントとして雇われる。彼は安い金でこき使われる。アーメドが次第に次なるナイトクローラーへ変わり始める様もさることながら、自分より下の者を得たことで、ナイトクローラーが心の安定を得るのが鋭い。そして、いつの間にか映像会社が立ち上げられるのが恐ろしくも可笑しい。

 ナイトクローラーが映像を売り込む弱小TV局の深夜ニュース番組のディレクターをレネ・ルッソが演じる。彼女とナイトクローラーの関係は最初、ルッソが圧倒的に上に立つ。ところが、スクープが連発されるに連れ、これが揺らぎ始める。ナイトクローラーが金の上積みを迫るのはもちろんのこと、ルッソを性的対象として見始めるのだ。視聴率が欲しいルッソはそれに屈する。このときのふたりのセックスシーンが素晴らしい。いや、直接的な描写はない。ただ、撮り立てほやほやの過激映像を確認するときのふたりは、確かにセックスの快感に似たそれに浸っている。ルッソがキャリアベストの演技を見せる。

 もちろんナイトクローラーに扮したギレンホールは説得力抜群だ。人相が変わるほどに体重を落とし、闇の中にぎょろりとした目を輝かせる様に、不思議と艶がある。赤い車を猛スピードで転がし、犯罪現場では迷いなく倫理を踏み越え、それにより手にした力を冷徹に操り、気がつけば自分の王国を築き上げている。その悍ましさを恐れることなく身にまとう。一切の同情を拒否した人物。ギレンホールの渾身の一打が鮮やかにキマる。怪物の時代は、まだ始まったばかりだ。





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