ブラック・シー

ブラック・シー “Black Sea”

監督:ケヴィン・マクドナルド

出演:ジュード・ロウ、スクート・マクネイリー、ボビー・スコフィールド、
   ベン・メンデルソーン、デヴィッド・スレルフォール、
   コンスタンティン・ハベンスキー、セルゲイ・プスケパリス、
   マイケル・スマイリー、グレゴリー・ドブリギン、
   セルゲイ・ヴェクセル、セルゲイ・コレスニコフ、ジョディ・ウィテカー、
   トビアス・メンジーズ、カール・デイヴィス、ダニエル・ライアン

評価:★★★




 ある男のセリフ。「潜水艦と娼婦は同じだ。年季が入っている方が良い」。本当にこんなことを言うのか否かは別にして、『ブラック・シー』の乗組員は大きな不安を抱えて艦に乗り込んだことだろう。彼らに用意された艦は古い。いや、古いだけでなくガタが来ている。廃棄寸前の艦、それが男たちの運命を乗せて海深く潜る。

 潜水艦映画の定番が守られる。圧倒的息苦しさ。静かなる深海の表情。艦の軋む音。艦に入り込む水。音を頼りにした周辺調査。逃げ場のない空間が、知らぬ間に男たちを精神的に追い詰める。

 しかし、ケヴィン・マクドナルドの手腕が光るのは、定番を引き立てる技の投入にある。例えば、ふたりの素人を艦に放り込む。ひとりは艦の煙突と窓を掃除しろとからかわれる18歳の少年。もうひとりはいかにも胡散臭い何かを抱えた銀行家。ただでさえ癖の強い男たちは、彼らが入り込むことで「通常」の仕事ができなくなる。とりわけ少年は艦長と父子のような関係を築く重要な役割を担う。

 また或いは、男たちの半分をイギリス人、もう半分をロシア人に分ける。男たちに黒海に沈没したUボートの金塊を探すミッションを与えるだけでなく、自然発生する対立関係を露にすることで、次に何が起こるか分からない緊張の糸を緩めない。もちろん糸は鋭利だ。歴史や時事的問題がじわじわ効いてくる。

 しかし、何と言っても、ジュード・ロウの起用が光る。「ドム・ヘミングウェイ」(13年)に続くロウの「オッサン宣言」。前頭部で円を完成させる寸前のハゲ。身体全体にうっすら乗った脂肪。若さの消えた立ち居振る舞い。美青年だった頃の匂いを全く感じさせないけれど、だがしかし、今のロウには、そういう避けられない人の変貌にまつわる寂しさを破壊する余裕がある。人は誰しも歳を重ねる。けれど、決してそれはマイナスになるだけではない。

 ロウが演じる中年男は、長年勤めた会社をクビになり、金塊発掘により一発逆転を狙う。前半は艦長としてその決断力を光らせ、後半は徐々にその裏に潜む狂気を漂わせる。若い頃からこれだけは変わらない真っ青な目は、男の、それでも充実の浮上を願う「飢え」と完璧な合体を見せる。その切なさが実に良い。今の佇まいがあればこそだ。

 マクドナルドとロウの勝利はクライマックスの流れに明らかだ。「無謀」や「愚か」の言葉しか見つけられない…などという愚が巧妙に避けられる。社会で行き場をなくした魂の僅かなる救済の灯り。消える寸前だったそれへの向き合い方に誠実さを見る。





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