ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ

ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ “Nowhere Boy”

監督:サム・テイラー=ウッド

出演:アーロン・ジョンソン、クリスティン・スコット=トーマス、
   アンヌ=マリー・ダフ、デヴィッド・スレルフォール、
   デヴィッド・モリッセイ、トーマス・サングスター、
   サム・ベル、オフィリア・ラヴィボンド、ポール・リッター

評価:★★★




 ザ・ビートルズにはあんまり興味がなくて(嫌いではない)、その知識も豊富とは到底言えない。それゆえだろうか、ジョン・レノンがハイティーンだった時代を取り上げていると言っても、そこでの出来事がアーティスト、レノンの音楽に重なっていく、或いは影響を与えていく面白さのようなものは感じられなかった。音楽を始めたきっかけが母親にあっただとか、ポール・マッカートニーとの出会いもこの頃だったとか、せいぜいそのくらいのトリヴィアルエピソードの挿入。ビートルズやレノン絡みの音楽も期待ほどには流れない。音楽映画としては拍子抜けと言って良い。

 そもそもこれはレノンを主人公にした青春ドラマとして観るのが正解なのだろう。レノンには実母と養母、ふたりの母親がいて、彼は実母の存在を知ってから、人知れず思い悩むのだ。それは後に世界の頂点に立つ若者とは思えないほどにフツーだ。いや、母親がふたりいる者の数はそうでない者のそれに比べて圧倒的に少ないはずで、数値で考えると特殊なのかもしれない。ただ、その悩み方はストレート。全くもってフツーに悩むので、他の若者同様(悪い意味ではなく)思慮が足りなく、或いは短絡的に見えるときがある。レノンもフツーに辛いところのある青春を過ごし、フツーに悩んでいたとでも言いたいのであれば、完璧な演出。でも、それではレノンを取り上げた意味がなくなってしまう。

 レノンを演じるアーロン・ジョンソンは身体が緩くて、もうひとつ締まりが感じられないのが難なのだけど、髪をセットし、メガネをかけて、ギターを肩に背負い、街中を歩くショットはなかなか絵になっている。しかし、ジョンソンよりも断然光っているのは、母を演じるふたりの女優だ。

 アンヌ=マリー・ダフが生みの母を演じる。パッと見た感じではレノンと姉妹に見えるくらいに若々しく、友達のような母。陽気で気さく。が、実は身持ちが悪く、それがきっかけでレノンを手放してしまった。そのことで密かに自分を責めている。ダフの大きな目と尖ったアゴが、引け目混じりの愛のニュアンスを繊細に伝えている。

 クリスティン・スコット=トーマスは育ての母(実母の姉)を演じる。常に凛とした佇まいで、かつ厳しい眼差し。しかし、その根底にはレノンへの愛がどっしりと横たわっている。「ずっとあなたを愛してる」(08年)でもそうだったけれど、スコット=トーマス特有の苦味が素晴らしく効いている。誤解されやすい人物の、ホンモノの愛を、立体的に見せることに成功している。

 ユニークなのは、レノンへそれぞれ愛を注ぐふたりの母の物語が、姉妹の物語に転がっていくところだ。血が繋がっているがゆえの難しさが、女優の力もあって、迫力たっぷり。レノンをめぐる、奇妙な三角形がくっきり浮かび上がるのだ。レノンが主人公の話であることをつい忘れそうになる。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ