ウォーリアー

ウォーリアー “Warrior”

監督:ギャヴィン・オコナー

出演:ジョエル・エドガートン、トム・ハーディ、ニック・ノルティ、
   ジェニファー・モリソン、フランク・グリロ、ケヴィン・ダン、
   マキシミリアーノ・ヘルナンデス、ブライアン・カレン

評価:★★★★




 誰よりも強くありたい。男ならば考えることがあるだろう。肉体的な強さはもちろん、精神的な強さが物を言う。それを描くための舞台として格闘技の世界が選ばれるのは必然の流れ。映画ならばボクシングが最もポピュラー。プロレスやレスリングも目につくか。『ウォーリアー』ではスパルタという名の総合格闘技が選ばれる。

 話はシンプルだ。父の過去が原因でバラバラに生きていた教師の兄、元軍人の弟、そして再起を願う父親がスパルタの頂点を目指す過程で、それぞれの関係を見つめ直す。序盤は彼らの過去と現在がじっくり綴られる。ただし、声高らかに問題を掲げはしない。それぞれの静かな掛け合いの中にそれを浮上させる。格闘技に身を捧げる兄と弟が予想以上に捻くれた関係にあることが分かる。イベント前夜、砂地で久々の再会を果たす場面、胸が痛い。

 まず、泣かせるのは父親を演じるニック・ノルティだ。アルコール中毒で暴力的だった過去を悔い、息子たちに許しを請う。自業自得でしかないのに、どれだけ厳しい言葉を投げ掛けられても言い返さないノルティの哀しげな眼が目に焼きつく。長男からは信用しないと言われ、次男からはトレーナーとして必要としているだけと相手にされない。その心模様を思うと…。

 後半はトーナメント式のスパルタが遂に開幕。試合場面を繋いで物語を語る。前半の静寂が嘘のように一気に電圧が上がる。長男の想いは分かりやすい。教師の給料だけでは生活が苦しく、妻の反対を押し切ってトーナメントに参加する。勝てば暮らしは楽になるものの、負ければ手に入れたマイホームの立ち退きが待っている。助けられなかった弟のことも気になって仕方ない。幼い頃、父が弟ばかりを見ていたことも腑に落ちない。ジョエル・エドガートンがかつて、これほどにシンパシーを抱かせることがあっただろうか。

 しかし、より見入るのは弟の葛藤だ。母と一緒に父から逃げた後、暮らしは悲惨だっただろう。派遣先のイラクでは辛い出来事を経験、軍を離脱する。それが試合での野獣のごとき圧倒的強さをきっかけに元軍人の英雄として人々から祭り上げられる。その背後には家族に捨てられ、アメリカに捨てられ、もはや行き場を失った男の本当の姿が見える。リングの上は苦しみや悲しみを吐き出す場なのだ。トム・ハーディの素っ気ない態度がかえって沁みる。再び酒に手を出してしまう父を目撃したときの反応も忘れられない。

 クライマックスはエドガートンとハーディの一騎打ちだ。これまでの試合の行方以上に気にかかるのが、パフォーマンス中のハーディの表情で、優勢を誇っても泣いているようにしか見えない。そうなのだ。野獣として登場するハーディはしかし、この場面に限らず、どれだけ冷酷な言葉を口にしても、圧倒的強さで相手を伸しても、泣いているように見える。彼が最も欲しているものは何か。試合場面でエドガートンがかけるシンプルな言葉がハーディの魂を救う。

 小さな綻びは多い。最も苦しいのは、天才的才能を持つハーディとは異なり、平凡な実績しかないエドガートンをどうやって勝ち進めさせるか、現実味を与えられなかったことだけれど、俯瞰で見れば些細なことだ。メロドラマに堕ちる寸前で踏み止まる格闘の最中、迷子の魂の叫びが全てを飲み込んでいく。





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