ラブ&マーシー 終わらないメロディー

ラブ&マーシー 終わらないメロディー “Love & Mercy”

監督:ビル・ポーラッド

出演:ポール・ダノ、ジョン・キューザック、エリザベス・バンクス、
   ポール・ジャマッティ、ジェイク・アベル、ケニー・ウォーマルド、
   ブレット・ダヴァーン、グラハム・ロジャース、ジョアンナ・ゴーイング

評価:★★★




 ミュージシャンを主人公にした実話映画は、ドラッグと酒に溺れて堕ちていく様を見せられるのが憂鬱を誘う。『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』にもマリファナ絡みのエピソードが出てくるけれど、それによりボロボロになる場面がカットされているのが有難い。舞台が60年代と80年代に絞られているのが大きい。

 すっぽり抜け落ちた70年代が重要でないというわけではないだろう。端から伝記映画を目指していないのだ。だから主人公はバンドの中心メンバーであるブライアン・ウィルソンに限られる。そして数々のヒット曲や栄光の裏に潜む翳りを浮上させる。

 ヒット曲を出さなければならないプレッシャー。メンバーとの衝突。世間が求めるものとクリエイターとして求めるもののギャップ。時に暴力を振るうこともあった父親との確執。とりわけ父親との関係は大きな影を落とす。いきなり深刻さが前面に出るわけではないのが上手い。少しずつその正体の輪郭を鮮明にしていく。80年代、彼を利用する医師の存在が、父の幻影と繊細なリンクを見せるあたり、ゾッとする。

 実はかなり深刻な問題が扱われているのに、一定レヴェルの明るさが失われない。これはエリザベス・バンクスの存在が大きいのではないか。80年代、ウィルソンと運命的な出会いを果たすカーショップ店員がバンクスの役どころ。芯の強さを感じさせる切れ長の目と真心のコンビネーションが強力で、彼女が見つめる向こうには微かな光が煌めく。バンクスは80年代衣装もダサくならないスマートな着こなしで、ヴィジュアルも目に残る。

 もちろん二人一役を務めるポール・ダノとジョン・キューザックは素晴らしい。まとう空気としてはキューザックに若干の違和感を感じるものの、それも微々たるもの。ダノなど、ファニーな顔に音楽への忠誠と柔らかな気性をさり気なく忍ばせて、だからこそ差し込む影を的確に掴まえてみせる。

 ザ・ビーチ・ボーイズの楽曲の抜けの良さも大いに物語に貢献する。耳触りが良く、つい口ずさんでしまう言葉とリズムが、マリブの真っ青な空の下に現れる黒い雲を適度に吸い込む。60年代で描かれるスタジオ場面は見どころのひとつだ。音楽が出来上がる過程の躍動が、さり気なく凝った撮影と編集、そして一流の演技により充実の再現を実現している。ウィルソンの娘であるカーニーやウェンディ(もちろんウィルソン・フィリップスのふたり)が出てこない…なんて不満は、その頃には吹き飛んでいる。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ