フレンチアルプスで起きたこと

フレンチアルプスで起きたこと “Turist”

監督:リューベン・オストルンド

出演:ヨハネス・バー・クンケ、リーサ・ローヴェン・コングスリ、
  クリストファー・ヒヴュ、クララ・ヴェッテルグレン、
  ヴィンセント・ヴェッテルグレン、ファンニ・メテーリウス

評価:★★★★




 フレンチアルプスのとあるホテルのレストランのすぐ傍で雪崩が起きる。これが家庭崩壊の号砲だった。雪崩と言っても人工的に起こしたもの。死者もいない。けれど、スウェーデンからやってきた仲良し家族の関係に亀裂を入れる。雪崩の後、見た目は普通に戻る。けれど、チクチクする。指先に刺さった小さな棘が、なかなか抜けない。

 『フレンチアルプスで起きたこと』は喜劇だ。ただし、毒が効いている。いざというときの咄嗟の行動。夫がここで「ミス」を犯す。おそらく夫は直ぐに過ちに気づいただろう。「やっちまったよ俺!」と顔面蒼白になったに違いない。しかし、時既に遅し。その姿は自業自得とは言え、同情を覚えずにはいられない。

 コレ、重要。夫の情けなさを笑い飛ばすのは簡単だけれど、同じ状況になったとき、己が正しい行動を取れるか否か。判断に与えられる時間は僅か二秒もない。俺は大丈夫などと言い切れる男は信じない方が良い。斯くして夫は、妻から娘から息子からの冷たい視線を浴び続けることを強いられ、その威厳は大きな音と共に崩れていく。

 男は夫に、女は妻に肩入れするだろう。男たちは肩身が狭い。けれどだからと言って、女たちが安心して眺められる話でもない。男選びの重要性が説かれるからではない。妻と同じ立場になったとき、彼女と同じ反応しかできない場合、かなりイタイ。全てを見越した上で、家族をさり気なくコントロールする、それぐらいの器用さがあっても良い。夫を良い方向に勘違いさせるぐらいに。少なくとも妻の役割は夫を追い詰めることではない。

 夫がホテルの部屋の外で、遂に大声を上げて泣き出してしまう件からラストシーンまでの流れが、うーん、身を乗り出さずにはいられない。数秒の判断が全てを狂わせてしまう怖さと可笑しさが交互に、或いは同時に襲い掛かる。幼い子どもたちも含め、誰が計算ずくの行動に出ているのか分からない凄味が強烈。ある種のカタルシスも浮上する。腹に来る。

 リューベン・オストルンド監督はこの家族を観察する役に徹している。余計な意見を入れない。それゆえの構図。それゆえの長回し。それゆえの自然描写。クライマックス、山の中を歩く家族の姿に見える監督の人間観でさえ、家族に与えられた余白を決して奪わない。





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