人生スイッチ

人生スイッチ “Relatos salvajes”

監督:ダミアン・ジフロン

出演:リカルド・ダリン、オスカル・マルティネス、
   レオナルド・スバラーリャ、エリカ・リヴァス、リタ・コルテセ、
   フリエタ・ジルベルベルグ、ダリオ・グランディネッティ

評価:★★★




 一見、不幸に突き落とされたエピソードをまとめたシンプルなオムニバス映画。物語の可笑しさを受け止めてクスクスゲラゲラ笑うのがもちろん正解なのだけど、むむむ、ちょっと待て。ペドロ・アルモドヴァルもプロデューサーとして名を連ねるアルゼンチン映画『人生スイッチ』は、じっくり観察すると、映画の芸があちこちに散りばめられている。

 とりわけ脚本の芸。悲劇と喜劇は紙一重。よく言われることだ。ここでは表裏一体のそれを一度丁寧に引き離し、再接着を試みた気配がある。その際に粘着剤としてたっぷり使われるのが、思い切り振りきれた毒であるわけだ。

 毒の製造は「恨み」や「怒り」のエキスがたっぷり使われる。逆恨みもある。色恋の怨念も見える。子どもっぽい対立も顔を覗かせる。多種多様だ。恨みや怒りと言うと、どうしてもねっとり絡みつくようなどろどろとしたものを連想するものの、ここにあるそれは揮発性だ。泥臭く迫っても、後に引かない。不思議とさっぱりテイスト。

 これをアルゼンチンが舞台ゆえと見るのは強引か。ラテン系特有の大らかさや絶妙の気温と湿度、そしてテンポの良い語り口。前のめりに突っ走る悲喜劇の足を引っ張りかねないあくどさが、それらが奇跡的タイミングで投入されることにより、血流に快感の味を注いでいる。変に洗練されたものを狙っていないのが気持ち良い。

 用意された六つのエピソードは悲喜劇をまとめただけではない。いずれのエピソードにも「サイコ」が登場するのは共通している。ただし、その見せ方にひとつとして同じものがない。恨みの深さに焦点が当てられたかと思えば、躊躇いのない衝動がポイントとして浮上する。サイコが出来上がる過程が念入りに描写されると、その次には共感と同情を呼ぶ不条理さが話を支配する。サイコの上を行く開き直りが立ち上がった後には、やけくその感情の水に溺れた直後に生まれる愛が輝き始める。人の表裏が予測不能の事態に巻き込まれたときに露になるその瞬間、笑いが、炭酸飲料の蓋を開けたときのようにシュワッと弾ける。

 ベストエピソードはどれだろう。三話目の「エンスト」だろうか。サイコな田舎者に襲われる嫌味男の物語と見せかけて、男ふたりの立場がしつこく二転三転していく過程が、愉快痛快。最後のきついオチも含めて大いに笑った。もはやくど過ぎる最終話「HAPPY ENDING」の主演女優の怪演も忘れられない。





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