約束の地

約束の地 “Jauja”

監督:リサンドロ・アロンソ

出演:ヴィゴ・モーテンセン、 ヴィールビョーク・マリン・アガー、
   ギタ・ナービュ、エステバン・ビッリャルディ

評価:★★★




 何よりまず、画面の美しさに魅せられる。『約束の地』の舞台は1882年のパタゴニア。海辺の近く、すぐ奥には山が広がる。トドやカモメが鳴き、緑や青がくっきりと輪郭を作る。潮の匂い、草の匂い、風の匂いが濃い。これが「1.33 : 1」のフレームに収まる。

 とにかく奥行きが気持ち良い。カメラの動きをほとんど封じ、一点を見つめ続けるような視線が守られる。代わりに人物が動く。人間は景色の一部として存在する。大地の呼吸の中に人が溶けている。手前で動く人間だけに注意を向けるのはいけない。奥の方で、端の方で、情報がさらりと落とされていく。

 まるで写真の中で大地が、人間が動いているみたいだ。メガネ要らずの3D映像のように立体的で、目に焼きつく鮮やかさを誇る画面。しかもここには、詩情が漂う。見るべきところは画面の隅々までたっぷりある。しかし、余白はそれ以上にたっぷり用意される。そしてその積み重ねが画面の豊かさを膨らませる。ここはもしかして、天上の世界なのではないか、とすら思う。

 世界を案内するのは、先住民の掃討作戦に走るアルゼンチンに協力するべくやってきたデンマークのエンジニアだ。彼の一人娘が若い男と共に消え、彼は荒野を探し続ける。その姿が連想させるのは異空間に迷い込んだ綿毛のようで、彷徨にどこか非現実的な風が吹く。男を演じるヴィゴ・モーテンセンの佇まいが美しく、哀しげに、景色に馴染む。ほとんどセリフはない。そう、モーテンセンにセリフは要らない。

 この世には地上の楽園なるものがあるという。その理想郷こそが原題の“Jauja”だ。誰もがそこに憧れ、けれど到達した者はいないという。それを頭の片隅に置いておくと、一頭の痩せこけて傷だらけの犬が出てきてからの数場面が妙に沁みる。娘のことだけを考えてきた父はどこに辿り着くのか。明確に示されない分、後に残る。

 …のだけれど、ある時空の問題を抱えた、さらにその後の数場面には首を傾げる。これは所謂、蛇足というやつではなかろうか。やけにトリッキーな感触があり、一気に現実に引き戻される。モーテンセンが見えなくなるあの場面こそが、ラストシーンに相応しいのではないか。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ