奇跡の2000マイル

奇跡の2000マイル “Tracks”

監督:ジョン・カーラン

出演:ミア・ワシコウスカ、アダム・ドライヴァー、ローリー・ミンツマ、
   ライナー・ボック、リリー・パール

評価:★★★




 都会人が田舎暮らしに過剰な憧れを持つのと同様に、大自然の中に後先考えず身を投げ入れる行為もロマンティックに語られがちだ。そこに自分探しなんて要素まで入り込むと、もはや目も当てられない。陶酔や憐憫が猛毒に変わる。ならば、最初から近寄らないのが身のためだ。

 『奇跡の2000マイル』はそういうしみったれた幻想を拒否するのが良い。ヒロインはオーストラリア中部、アリススプリングスからインド洋を目指して2000マイルの徒歩の旅に出る。道中はほとんど砂漠。そして砂漠と言ったらラクダ。その調達や調教から旅支度に入る気合いの入りようだ。何となくのんびりしたイメージのあるラクダはしかし、口元がなかなか品がなく、見ようによっては狡賢くも感じられるのが可笑しい。想像以上に巨体なのもよろし。

 ヒロインのミア・ワシコウスカ、真っ黒の愛犬、そして四頭のラクダ。彼らが砂漠を歩くショットがキマっている。人間も犬もラクダもオシャレな自分を目指していないのが一目瞭然。そのスパイシーな(香辛料で言ったら、わさび的)雰囲気だけで魅せてしまうのが素晴らしい。

 ワシコウスカの色素の薄い顔が旅の過程で日に焼かれ泥や砂に汚れていくのが生々しい。日差しは容赦なく照りつけ、緑すら目に優しくなく、時折の水からは見えない湯気が立ち上がる。いきなりエアーズロックから始まった旅にコアラやウォンバットは見当たらず、カンガルーが出てきたと思ったら食用だ。ワシコウスカはあるとき、孤独な自分を嘆く。

 世間に馴染めず、何かを得られるかもしれないと始めた旅、大抵の映画はここで、自然と人間の対比に焦点を合わせ、世界を見せる。ここでももちろんそのあまりにも大きな自然の存在は無視されない。けれど、より細かく描き出されるのは、俗世間との繋がりの方だ。アダム・ドライヴァー演じる取材カメラマンの存在が効いてくる。そもそも旅にはスポンサーとして、「ナショナルジオグラフィック」がついている。

 ヒロインの過去の描写、それゆえの心の傷はもう少しだけ踏み込んでも良かった。フラッシュバックで入る程度でしかなく、これではかえってヒロインに余計な色をつけてしまう。ワシコウスカ、犬、ラクダの纏う空気への寄りかかりが大きい。まあ、この一団の画の説得力を見ると、そうしたくなるのも分からないではない。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ