チャイルド44 森に消えた子供たち

チャイルド44 森に消えた子供たち “Child 44”

監督:ダニエル・エスピノーサ

出演:トム・ハーディ、ノオミ・ラパス、ゲイリー・オールドマン、
   ジョエル・キナマン、パディ・コンシダイン、ジェイソン・クラーク、
   ヴァンサン・カッセル、グザヴィエ・アトキンズ

評価:★★★




 世界的に高い人気を誇るトム・ロブ・スミスのミステリー小説の映画化だという『チャイルド44 森に消えた子供たち』は、なるほど映画好みの材料がたっぷり揃っている。舞台は1953年、ヨシフ・スターリン政権下のソ連。秘密警察の捜査官とその妻が猟奇的な少年連続殺人事件を追う。

 物語を引っ張るのは殺人事件だ。線路沿いに次々見つかる少年の無残な遺体。どうやら一人でいる少年に狙いを絞り、男が言葉巧みに彼らを誘い込み、手にかけるらしい。窒息死させられたばかりが胃が摘出され、全裸で放り出された死体が並ぶのだから堪らない。社会の不穏な空気と事件の残酷性が共鳴し始める。

 そう、社会は戦争の影を引きずるかのように暗い空気に満ちている。当時のソ連は“理想国家”を自称し、それゆえ「楽園に殺人は存在しない」と殺しの存在を決して認めない。少年連続殺人も溺死事故として処理される。事件捜査の過程に社会の歪みが浮上する。この歪みが殺人事件以上に迫力を持って迫る。

 彩りを添えるのは夫婦愛だ。序盤、とあるパーティで夫が妻との出会いと結婚がいかにロマンティックだったかを語る。しかし、妻の表情には影が差す。妻の妊娠判明やスパイ容疑、そしてその顛末が、夫婦生活の裏にある事情を生々しく飾る。夫婦を演じるトム・ハーディとノオミ・ラパスのぎこちない距離感が素晴らしい。

 …というように面白い要素は少なくない。それにも関わらず、全体の印象がもうひとつ締まらない。題材の重厚さや隅々まで充実した配役もあるのに、何故。おそらくスピードとバランスが問題だ。最も熱量をかけて演出されるのがスターリン体制下の社会なのが拙い。語ることを意識した正統派のストーリー。それならば殺人事件の真相こそが、あくまで主役でなければならない。スピードを失いバランスが欠けた事件は、いつしか社会を映す鏡の役割しか果たさなくなる。

 それゆえの事件の吸引力の減退。あっさり犯人が明かされるのは良いにしても、そこに辿り着くまでの過程も猟奇性の意味も犯人との直接対決も、いくら何でも淡白が過ぎる。事件を盛り上げるために出てきたはずのゲイリー・オールドマンなど、唖然とする中途半端な使い方ではないか。

 主人公は「英雄」として登場する。犯人は自らを「怪物」と語る。その差はどこにあるのか。境界が霧のように消えていく、その流れだけは見失ってはいけなかった。行き過ぎたスターリン体制下の悪夢の膨張が、事件の怪異をおとなしいところに落とし込んでしまった。物語を語ることにもう少し気を配るべきだった。





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