サンドラの週末

サンドラの週末 “Deux jours, une nuit”

監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ

出演:マリオン・コティヤール、ファブリツィオ・ロンジョーネ、
   クリステル・コルニル、オリヴィエ・グルメ、カトリーヌ・サレ

評価:★★★




 ダルデンヌ兄弟は大抵の場合、登場人物を極めて現実的で過酷な状況に追い込む。そのやり口が生々しくて、ヒリヒリ痛くて、ズキズキ沁みる。ある種のサディスティックな思考の表れなのではないかと思うことすらある。それが『サンドラの週末』では少々感覚が違う。ヒロインの魂に寄り添いやすい。マリオン・コティヤールの起用が大きいのではないか。

 ここに出てくるコティヤールにはいつものカリスマ性は感じられない。月曜までに二十人に満たない同僚の過半数を味方につけないと解雇が決まる。天秤にかけられるのは、同僚が受け取るボーナスというから、何ともまあ世知辛い。しかも、これに立ち向かうのは後ろ向き女だ。現実に打ちのめされ、本当に膝から崩れ落ち、さらにはふて寝を決め込むとは!当然めそめそ泣くことも多く、こういうヒロインは観客の気を滅入らせる(実際ダルデンヌ兄弟映画の主人公はこの要素が強く、リアリティを言い訳に“過剰”に走る)。

 そこでコティヤールだ。確かに庶民的で質素な立ち居振る舞い。しかし、それでもなお役柄に凝視させる技をコティヤールは持っている。地味なままに、視線をそこに固定させる。外見ではなく演技の質そのものに吸引力を具える俳優は、なかなかいない。ユニークなスター性だ。

 ダルデンヌ兄弟はコティヤールを夫以外の人前で泣かせない。自分の復職するために投票するよう説得する同僚行脚、相手から厳しい言葉をかけられることもあるし、物乞いをしているのではないかと感じることもある。それでもそれを顔に出し、同情を請いはしない。このあたりは日本人の美徳と通じるものがあるのではないか。

 実のところ、ダルデンヌ兄弟映画の性質を考えると、投票の結末は読めなくもなく、そしてその先の落としどころも難しくはない。ダルデンヌ兄弟が目指すのは、ベルギーの労働問題やそれでも生きていかなくてはいけない現実、そして人には思いがけない生命力が宿っていることを見せることだ。つまり意外性はない。人生の見方を変える発想もない。

 けれど、だからこそ、彼らの演出力の充実がくっきり見えると言うのは皮肉になってしまうだろうか。主人公をどん底にまで落として、そこから這い上がる一発逆転のカタルシスなんかは端から放棄。こつこつとなされる説得の旅路の過程で、ヒロインの造形や十人十色の人の思考が立体的になっていくグラデーションが鮮やかに焼きつく。導かれる希望がどこかで見たものであっても、説得力は次元が違う。





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