ラン・オールナイト

ラン・オールナイト “Run All Night”

監督:ジャウマ・コレット=セラ

出演:リーアム・ニーソン、エド・ハリス、ジョエル・キナマン、
   ヴィンセント・ドノフリオ、ニック・ノルティ、ブルース・マッギル、
   ジェネシス・ロドリゲス、ボイド・ホルブルック、コモン

評価:★★★




 困ったときのリーアム・ニーソン頼み。アイデアがないときは、とにかくニーソン(或いは同じような年齢の俳優)を暴れさせれば良い。そういう短絡的思考から企画が始まったとしか思えない作品が多い昨今。それに決着をつけるのは己しかいない。ニーソンがそう覚悟を決めたのか、『ラン・オールナイト』は暴走ニーソン映画の決定版のような映画だ。ニーソンと相性の良いジャウマ・コレット=セラが監督を手掛けるのが心強い。

 コレット=セラはまるで、「96時間」(08年)を俺ならこう撮るとばかりに挑戦的な設定に挑む。ニーソンが演じるのは落ちぶれたマフィアの殺し屋で、その彼が守るのは折り合いの悪い真面目な息子だ。娘を思うあまりに暴走機関車と化すだけで持たせる単純さを良しとせず、普通の家庭であっても複雑になりやすい父と息子の関係から目を逸らさない。

 そう、ここで利用されるのがニーソンの演技力だ。アクション映えする見事な体躯と同時に、その繊細な感情表現こそが彼の武器だ。ならばそれを使わない手はない。愛を伝えるのが下手で、その通り息子から拒絶され、それでも息子だけは守ると決めた男の覚悟。男が男に惚れる瞬間を的確に捉える。言い訳はしない。泣き言も言わない。苦痛には耐える。心の傷は隠す。このニーソンの魅力は女よりも男の方が感じ入るところが大きいのではないか。

 息子を演じるジョエル・キナマンはそんなニーソンの芝居をできる限り静かに受ける。実は悪人面なのに、父にどう接したら良いか分からない悩ましい心模様をボーズ頭に映し出す。面白いのが、彼が決して人を殺さないところだ。いや、家族を守るためならば彼も手を汚すだろう。けれど、それをニーソンが許さない。ニューヨークの一夜、ニーソンはそれこそに賭けようとする。息子の人生を台無しにしてはいけない。こういうシンプルさが沁みるのだ。息子が父の怪我の手当てをするときの「タトゥーを消すなよ」というニーソンのセリフと、それを受けたキナマンの表情も良い。

 コレット=セラはまた、ここにもうひとつの親子関係を放り込む。エド・ハリスとそのバカ息子ボイド・ホルブルックのふたりだ。出来の悪い息子でも息子は息子。息子を殺されたハリスが見せる哀しみの演技が、悪役ながらグッと来る。ハリスとニーソンが長年心を許し合ってきた仲というのが隠し味になる。終盤、電車操車場におけるふたりの掛け合いは作中、見せ場のひとつだ。特にハリスのニーソンへの一瞥が、あぁ…。

 コレット=セラの物語の流れを殺さないリズミカルな演出はもっと讃えられるべきポイントだろう。さりげなく凝ったカメラワークや照明。アクション場面による編集テクニック。じっくり見せるべきところを急がない、緩急のついた話法。操車場場面以降のエピソードが蛇足だったり、街中を巻き込んでのサスペンス作りが大味に感じられたり、黒人少年の扱い方がご都合主義的だったり、粗も目立つも、目くじらを立てる程のことではない。ここはそれらに目を瞑り、血が繋がっているがゆえに気持ちを素直に伝えられないどうしようもない父息子の、愛すべき性に浸るのが正解だ。





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