Mommy マミー

Mommy マミー “Mommy”

監督:グザヴィエ・ドラン

出演:アンヌ・ドルヴァル、アントワーヌ=オリヴィエ・ピロン
   スザンヌ・クレマン、パトリック・ユアール、アレクサンドル・ゴイエット

評価:★★★




 「私たちにはそれしかない」と言う。私たちとは母と息子だ。それとは愛だ。『Mommy マミー』に出てくる母息子は、世間で言うところの「普通」とはちょっと違う。父の死後、息子は多動性障害(ADHD)と診断され、暴力を含む突拍子もない言動を繰り返す。奇しくもカナダではある法律が成立する。発達障害の子を持つ親が経済的困窮、身体的・精神的危機に陥った場合は、養育を放棄し施設に入院させる権利を保障するのだという。

 母は辛抱強く愛を示し続け、息子はそれを少しずつ感じることで穏やかになっていく…などという安全な気配は全くない。バラバラに砕けた硝子の破片が彼方此方に飛び、けれどそれを避ける隙間もなく、母と息子は傷を増やし続ける。ふたりの距離が遠いのではない。近いのだ。

 何度もふたりの衝突が描かれる。もしかしたら母は息子を疎ましく思っているのではないか。ひょっとして息子は母を憎んでいるのではないか。最初ふと過ぎる浅はかな考えは知らぬ間に消滅する。むしろふたりの互いに抱く感情は純度が高く、それゆえに別の物質から刺激を受けることで、形を変えやすい。

 ふたりの間に隣人の女性が入り込むあたりは、作り手の観察眼が冴える。一見穏やかになったそれぞれの関係性が、しかしそれが問題の深さと想像以上の愛の深さを際立たせる。母と息子、そして隣の女は各々、内に秘めた想いを痛感する。そう、文字通り痛い。その痛みから逃げない作り手の意思。

 これは母と息子の戦いの物語なのだろう。グザヴィエ・ドランは絶望的な境遇で、時に愚かしく動くこともある人々を美化することなく、彼らの本能的な部分を凝視する。どれだけ傷つけ合っても、本能の息遣いには嘘が混じらない。彼らの物語には気が滅入るかもしれない。けれど、それを見つめ続ける意義はあると確信している。

 華麗なカメラワークや一対一のフレーム、リズミカルな編集等、相変わらずのドランの映画術の中で、役者が皆、最高級の演技を見せる。喜怒哀楽の中に母の深い愛を映し出すアンヌ・ドルヴァル。無邪気な表情と肉体に色を落とさない技を決めるアントワーヌ=オリヴィエ・ピロン。静かな佇まいに抑圧された激情を湛えるスザンヌ・クレマン。彼らのアンサンブルをまとめ上げるところこそ、今回のドランの最大の手柄だ。彼らの佇まいに映る情動が映画の宝になる。





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