クロッシング

クロッシング “Brooklyn's Finest”

監督:アントワン・フークワ

出演:リチャード・ギア、イーサン・ホーク、ドン・チードル、
   ウェズリー・スナイプス、ウィル・パットン、エレン・バーキン、
   ヴィンセント・ドノフリオ、ブライアン・F・オバーン、
   マイケル・ケネス・ウィリアムス、リリ・テイラー、シャノン・ケイン

評価:★★




 アントワン・フークワ作品というと、出来映えは別にして、一貫して“熱い”イメージがあったのだけど、どっこい『クロッシング』は最初から最後まで低温のまま進む映画だ。物語が一向に熱を帯びないのだ。多分、構成が脆いのだろう。

 主人公は3人いる。いずれもブルックリンの低所得者が集まる地域を担当している刑事。私生活も仕事も疲れ切っているリチャード・ギア、子だくさんで家を買う金の工面に苦心しているイーサン・ホーク、潜入捜査で善悪の境界に悩むドン・チードル。彼らの現状を平等に描き出すも、いずれもどこかで見たような葛藤であり、その上それを水で薄めたような淡白な刺激しか内包していない。いくらその胸の内を吐き出しても、それ自体が迫力を欠くためにドラマがせり上がってこないのだ。

 ただ敢えて言うなら、ホークの演技には一見の価値があるだろう。ホークの疲れ加減がいよいよ病的なところにまで来ていて、それこそ狂気が全身から滲み出ている。…にも関わらず、彼が金を捻り出すためにやることと言ったら、犯罪現場の金を懐に掠め取るという小ささで、その追い詰められ方と行動のギャップの皮肉がかなり効かせられている。カトリックという設定もおつな味わい。このところのホークは作品を重ねる毎にくたびれてきている。当初はどうしたことかと心配したものだけれど、それがちゃんと味わいに変換されてきた。街中を全速力で走る場面があるのだけれど、それが生きる金のためというのに呆れつつ、実に涙ぐましい。チードルはいつも通り達者な演技。ギアはワンパターンで、制服も似合わない。

 クライマックスこそ、おそらくフークワが最も描きたかった場面だろう。ある晩、主役の3人が何かに吸い寄せられるように、とあるアパートに集まり、それぞれが何らかの決着をつける。各々緊迫した状況下に置かれるのだけれど、案外サスペンス性が薄いのは拙いのではないか。いや、そもそもフークワは盛り上げを放棄しているかのようにも見える。その代わりに格差や差別が蔓延る過酷な現実に目を向ける。そしてこれが今のアメリカなんだと叫んでいるかのような。淡々と夜の闇の中に悲劇が映し出されるものの、作為ばかりが前面に出ているのが残念無念。

 不思議なのは静の場面が多いというのに、やたら騒がしい印象が残ったことだ。銃弾と数と流れる血の量が多いからだろうか。まるで筋肉男たちが乱れ合いを見せた80年代アクションのようなイメージもある。アプローチが浅く、古臭いからかもしれない。





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