恋する宇宙

恋する宇宙 “Adam”

監督:マックス・メイヤー

出演:ヒュー・ダンシー、ローズ・バーン、ピーター・ギャラガー、
   エイミー・アーヴィング、フランキー・フェイゾン、
   マーク・リン=ベイカー、ハヴィランド・モリス

評価:★★★




 アスペルガー症候群に限らず、障害を抱えた者を取り上げた映画が苦手だ。大抵が彼らの純真無垢な内面を大袈裟に取り上げて、彼らから何がしかの真実を学ぼうとする、お節介で説教臭いストーリーになることが多いためだ。こういうアプローチを卑しいとしか思えないと、彼らが出てくるだけで若干構えてしまうようになる。『恋する宇宙』はまず、そういう危惧を忘れさせてしまう作りになっているのがイイ。明らかにアスペルガー症候群に関係した言動も出てくるけれど、主人公はむしろ酷く内向的で人付き合いが苦手な青年という捉え方がなされていて、そこに同情や崇拝の匂いはない。だから青年は時にユーモラスに、時に恐ろしくも映る。彼らから学ぶのではなく、彼らを語る話になっている。

 物語は青年が住むアパートに絵本作家志望の女が越してくるところか始まる。ふたりが心も身体も通わせるようになる過程を綴った前半が良い味わい。映画らしい特別なエピソードが出てくるわけではないのだけど、ふたりのちょっとした心の揺れ動きを愛らしくまとめている。演出で言うと、小さくまとめてしまっているということになるのかもしれない。ただ、この映画にはそれがピッタリだ。日々の生活の中で出会った男女が互いが気になっていく様を、優しく見つめている。

 女は青年と出会うことで、いつもならば見逃してしまっていただろうものに目を留めることになる。セントラルパークに棲むアライグマだったり、普段は見えない星々だったり…。別にそれに気づいたからといって人生が大きく変わるわけではないし、何かのきっかけになるわけでもない。ただ、物事が別の角度から見えてくる。その面白さがちゃんと伝わってくる。演じるヒュー・ダンシーとローズ・バーンの相性も悪くなく、特にダンシーのやり過ぎていない青年像が心に残る。

 後半になって女の父親がせり出してくるあたりから空気が硬くなってしまうのが惜しい。会計士である父親が訴えられ、女はその現実に向き合わざるを得なくなり、青年との関係にかけられていた魔法も消えていく。誠実な見せ方だと思いつつも、次第に現実問題が人間関係を押し潰していくのを見せられるのは気分が重くなる(父親は何のために出てきたのだろう。波風を立てるため?)。それに青年とのやりとりが、「アスペルガー症候群との付き合い方」的なマニュアル本風に感じられるところも多くなってくる。女が青年との距離を都合良くコントロールしているように見える箇所もある。

 結末はちょっと意外だった。御伽噺風に収めるのではなく、ほろ苦い味つけがなされている。恋愛ではなく、人と人が出会うことそのものについての物語だったのだと腑に落ちる。「あの本」を読んでみたくなる。





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