ウルフマン

ウルフマン “The Wolfman”

監督:ジョー・ジョンストン

出演:ベニチオ・デル・トロ、エミリー・ブラント、アンソニー・ホプキンス、
   ヒューゴ・ウィーヴィング、ジェラルディン・チャップリン、
   マリオ・マリン=ボルケス、エイサ・バターフィールド、リック・ベイカー

評価:★★




 ベニチオ・デル・トロが最初に狼男に変身し大暴れする場面を観て、疑いが確信へと変わった。『ウルフマン』には一流のキャストが揃っていて、撮影もヴィクトリア朝時代を雰囲気たっぷりに捉えている。つまりは格調高い物腰だ。しかし実は、巷に溢れ返っているB級ホラーに分類すべき映画だろう。もちろん褒め言葉ではない。

 狼男を取り上げている時点で予想していたことではあるものの、狼男に変身してしまうとデル・トロの面影が完璧に消えてしまうのが寂しい。メイクを担当したリック・ベイカーはこの道の第一人者だ。懲り過ぎてしまったのが災いしたのか、毛むくじゃらになってしまったら最後、デル・トロが演じる必要性が全く感じられない。その上、狼男の動きを表現するために視覚効果が入り込んでくるというのだから、どういうつもりなのかと問いただしたくなる。デル・トロという人は演技力もさることながら、その身のこなしにも特筆すべき面白さがあるのだけれど、メイクで狼人間に変身し、視覚効果で狼の動きまでつけられてしまったら、もはや彼にできることはない。

 しかも、だ。狼男が暴れ回る場面の演出は、ハリウッド製ホラーの中でもクリーチャーが出てくるタイプ、分かりやすい例で言うなら「13日の金曜日」シリーズのジェイソン風のスプラッターホラー仕様になっていて、血が飛び散り、内臓が抉れ、身体は串刺しになり…という極めて残酷なもの。狼男の性質を考えると致し方ないところもある。ただ、その背後に作り手が嬉々として演出しているのが透けて見えるのは、結局気分が良いものではないだろう。殺戮場面をじっくり舐めるように撮っている上、さらにはデル・トロを拷問にかける場面までもが登場、全編に渡って怪奇ムードを煽る音楽が大音量で鳴り響いているのも、どういうセンスなのか。作り手がスプラッターファンであることだけはよく分かる。ホラー映画に不可欠のロマンはどこへ行ったのか。

 脚本がしっかりしていれば、まだ物語は楽しめたかもしれないのだけど、B級ホラーの味に合わせたかのように、それも頼りない。デル・トロの父を演じるアンソニー・ホプキンスの役柄が薄っぺらなこと、そしてジプシーを演じるジェラルディン・チャップリンを活かせなかったことが、致命傷になった。前者は後半の展開の鍵を握る重要な意味を持っているのに、描き込み不足のせいで、単なるマッドな人間である。後者は意味ありげなセリフを吐くだけ吐いて何もせず、尺伸ばしに出てきたとしか思えない。それからデル・トロとエミリー・ブラントが出会ったときから強烈に惹かれ合っていたことを示すエピソードがすっぽり抜けているのも、腑に落ちないところだ。せっかく絵になるふたりなのに。

 狼男はひょっとすると案外映画向きのモンスターではないのかもしれない。ドラキュラのように俳優の素の部分を活かすのが難しい。ベイカーによるメイクがデル・トロ自身を意識させるものになっていたら、映画の印象も違っていたような気がする。





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