ギリシャに消えた嘘

ギリシャに消えた嘘 “The Two Faces of January”

監督:ホセイン・アミニ

出演:ヴィゴ・モーテンセン、キルスティン・ダンスト、
   オスカー・アイザック、デイジー・ビーヴァン

評価:★★★




 パトリシア・ハイスミスの小説を原作にした『ギリシャに消えた嘘』の話の大半は、3人のアメリカ人によって進められる。ギリシャ旅行中の夫婦、そしてガイドを務める青年だ。一見円満な夫婦と朗らかな青年。しかし、別の顔が現れるのは早い。果たして、夫が殺人を犯すのだ。

 何と言っても、悪の匂いが愉快だ。…と言っても、重みも華もない。実は詐欺師である夫と彼が稼ぐ金の恩恵を受けて優雅に暮らす妻。旅行客から「手数料」をくすねる青年。そう、彼らは悪党は悪党でも、小悪党というやつだ。浮世離れしない小心と密着した悪が、いかがわしくも、愛しく感じられる。

 ただし、時代は1962年。しかもヨーロッパが舞台と来れば、その画には艶が出る。夫婦登場場面では、クリーム色のスーツにハットをキメた夫とレモンイエローのワンピースを巻き毛で着こなす妻が、ギリシャの陽射しを浴びるのが気持ち良いの何の。そこを頂点に、青年を含めた3人の佇まいにどんどん影が差してくる。

 影はそこに官能を持ち込む。この質が、事件の小ささに較べて随分上等だ。調味料となるのは憧れと嫉妬、そしてそこから転じる憎しみという感情で、それが暴走するほどに官能が笑みを浮かべる。もちろん人間関係は捩れる。

 ホセイン・アミニが古風な画作りを目指したのが正解だ。アルフレッド・ヒッチコックの匂いを多少飛ばしながら、画面の色合いや転換法、選曲に古めかしい味を取り入れる。酒や紫煙を味方につける。写真も物を言う。古臭いのではなく、古めかしいがゆえの花が咲き乱れる。普遍性を具えた古風な空間が広がる。

 ヴィゴ・モーテンセンが素晴らしい。本来、もっとスケールの大きな役どころがぴたりと来る人なのに、ここでは小悪党のハートを、風に吹かれるように転がして楽しく遊んでいる。親子ほど歳の離れた妻キルスティン・ダンスト(老け方が面白い)と並んでも違和感を感じさせないあたり、本物だ。モーテンセンと並ぶと、青年に扮した好調オスカー・アイザックは多少不利だったか。案外尻が大きくて、下半身が重たい。この役にはもっと軽妙さが欲しい。

 モーテンセンとアイザックの関係に父子関係に似た要素がちらつく。それをもっと膨らませても面白かったとも思うし、これぐらいがちょうど良いとも思う。余白が取られているので、想像の泉が刺激されるのだ。





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