バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) “Birdman: Or (The Unexpected Virtue of Ignorance)”

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ

出演:マイケル・キートン、エマ・ストーン、エドワード・ノートン、
   ナオミ・ワッツ、ザック・ガリフィアナキス、エイミー・ライアン、
   アンドレア・ライズボロー、リンゼイ・ダンカン

評価:★★★




 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが喜劇を撮る。…と言っても、分かりやすさと低俗さを目指した映画になんかなるわけがない。イニャリトゥが狙いを定めるのは、意外やショービズ界だ。それもハリウッドではなく、ブロードウェイというのが意表を突く。かつてヒーロー映画のバードマン役で頂点を極めながら、今は落ちぶれてしまった主人公の再生…というシンプルなテーマ。その厚みとコクに捻りがある。

 ショービズ界が抱える悪夢はもちろん無視されない。名声にまつわる栄光と没落。金の動き。俳優のエゴ。成功への長き道。演技論。批評家の存在。世間の見る目。リハビリ施設を出たばかりの娘との関係も加わり、主人公は再び飛翔するため、様々な障害を飛び越えなくてはならない。彼がそれに衝突する度に、滑稽味と哀しみを湛えた笑いが花火のように散る。イニャリトゥはそれを頭でっかちに評価しない。

 主人公が直面する現実と幻想を魅せるために駆使される技が冴える。全編一発撮りしたかのような長回し。それゆえの独特の構図。時に魚眼レンズを思わせる画。閉塞感のある劇場の楽屋と空が広がる屋外の対比。切れ目を感じさせない編集。妖気を感じさせる照明。何より心を掴まれるのは、場面が転がり始める度に鳴るドラムの音だ。主人公の傍らで叩かれる音が映画のリズムを美しくも大胆に整える。すると舞台と映画の境界がユニークに立ち上がり始める。現実と幻想は音も立てずに溶け合う。

 イニャリトゥは俳優たちのアンサンブルを、まるで怪奇映画でも撮るようなタッチで描き出す。俳優たちが演じるのは普通の人間に過ぎないのに、魔物が棲む世界ゆえなのか、その心拍数は通常より早いように感じられる。誰もがその空間で、懸命に息をする。どの俳優もそれを見逃さない。

 中でもやはり主人公をマイケル・キートンが演じた意味は大きい。バットマンを降板後のキャリアと主人公のキャリアが重なるのは狙い通りの配役だろう(キートンは落ち目というほど低迷していたわけでもないが)。ただし、イニャリトゥが彼に見つめるのは哀れさではなく淋しさではないか。彼の世界は彼を遂に受け入れる。それによりキートンは再び舞い上がる。それがキマるラストショットが素晴らしい。

 惜しむらくは、やや技が前に出過ぎたことか。イニャリトゥは主人公を描くため、その場面において最も効果的な技を投入する。それは理解できるものの、巧過ぎて主張が煩くなった嫌いはある。物語のハートと優れた技術が拮抗しながら、最終的に技術が一歩出たような感覚。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』はカメラの後ろにイニャリトゥの顔が、時折ちらつくのだ。





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