博士と彼女のセオリー

博士と彼女のセオリー “The Theory of Everything”

監督:ジェームズ・マーシュ

出演:エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ、チャーリー・コックス、
   デヴィッド・シューリス、マキシン・ピーク、ハリー・ロイド、
   エミリー・ワトソン、サイモン・マクバーニー

評価:★★★




 スティーヴン・ホーキングという名前から思い浮かぶ言葉は「宇宙」「ブラックホール」「時間」「天才」といったあたりか。凡人には到底理解できない学問分野で賞賛を浴びる人物だ。『博士と彼女のセオリー』は彼の人生を描く。…と言っても、伝記の匂いは微かに留められる。ケンブリッジ大学時代、パーティで出会った妻ジェーン・ワイルドとのラヴストーリーに仕立てたのがミソだ。

 最初は別にドラマティックなふたりではない。特別な何かを一目で互いに感じる普通の男女。けれど、そこはホーキング博士、セリフが面白い。自分の得意とする学問絡みの言葉を紡ぎながら、ユーモアを滲ませる。狙った笑いではないのが良い。真面目に、誠実に話し、それが独特の可笑しみに繋がる。舞踏会の後、ふたりが星空の下で踊る場面は実にロマンティックだ。が…。

 が、良いことばかりは続かない。そう、ホーキング博士と言ったら、筋萎縮性側索硬化症を患うことでも知られる。筋肉の衰えにより高速で身体の自由が奪われていく。その暮らしには想像を絶する苦労があるだろう。ふたりの戦いが中盤の山になる。この見せ方が微妙なところで、介護ドラマにすり替わったような、それでも献身的に愛を注ぐ妻の深さを見せるような…宙ぶらりんの気持ちになる。

 …そう思ったところで盛り返す。病気がますます進行していく過程で「三角関係」が投入されるのだ。ホーキング博士の介護を手伝う形で牧師がふたりの生活に入り込む。ホーキング博士がさり気なくそう誘導したように見えるところに複雑な夫婦愛が浮上する。メロドラマと言ってしまえばそれまでだけれど、むしろ深い人間愛を感じさせる。

 しかし、この映画の最大の売りは主人公夫婦に扮した英国俳優ふたりの演技だ。ホーキング博士を演じるレッドメインが身体の自由を奪われていく過程に潜む苦悩と苦痛を生々しく見せる。足がよろめき、腕が捩じれ、首が傾き、顔も歪む。痛々しい。けれど、ここが素晴らしいのだけれど、それでも何ともまあ、チャーミングなのだ。レッドメインは元々己が具える柔和な空気を殺すことなく役柄に投影している。だからこそ、彼の姿は目に焼きつく。

 ジェーンを演じるフェリシティ・ジョーンズも愛情深いだけでは終わらない心の謎を見事に体現する。献身を誓った愛。苦労を覚悟した結婚。けれど、綺麗事だけでは終わらない人生。それに耐えながら、思いがけない新しい未来を見出す様を、苦味も交えながら魅せる。げっ歯類的顔立ちに聡明さが宿る。

 ホーキング博士とジェーンは歩く速度が異なる。そしてそれは生活のスピードがずれるということだ。ふたりの間に流れる時間は同じでありながら同じではない。ふたりがそれに向き合う様を見つめる物語と言って良いかもしれない。肉体と精神が奇跡的に噛み合い、たとえ離れても繋がり続けるところに、すぐ傍らにある宇宙を見る。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ