スペース・ステーション76

スペース・ステーション76 “Space Station 76”

監督:ジャック・プロトニック

出演:パトリック・ウィルソン、リヴ・タイラー、マット・ボマー、
   マリサ・コフラン、ジェリー・オコネル、カイリー・ロジャース

評価:★★




 そのサバービアで起こる出来事に目新しいものはない。美しい風景。落とされる緑。綺麗な洋服。大切な仕事。抑え切れない欲望。繋がれない苦しみ。吐き出される性欲。圧倒的な孤独。傍らにあるドラッグ。不安定な精神状態。同性愛。夫婦の危機。不倫。ほら、そんな目新しいものではない。ただし、そのサバービアは宇宙にある。『スペース・ステーション76』は宇宙の片隅に浮かぶステーションで暮らす人々を描く。

 ここでの宇宙はメタファーだ。タイトルにもあるように美術や衣装、化粧や髪型は70年代が意識されていて、レトロポップな匂いがぷんぷん。多少サイケデリックな空気も漂う。全体的に作り物感が強調される。一見理想の街並み。けれど、その奥底には人間ならば誰もが抱える抑圧の感情が蠢いていて、宇宙空間に僅かしかない空気を振動させる。その様を観察する。したがってここには、SF映画でお馴染みの冒険は皆無だ。

 作り手はそういう風にしか生きられない人間の滑稽さや哀れさを掬い上げる。宇宙空間と言えど、欲しいものは何でも手に入る。健康管理もセラピーも掃除も料理もマシーンがこなす。男と女がいる。植物は育ち、ペットを買うことも可能だ。でも、どうしても何かが足りない。人間という生き物の寂しさを反射させる。

 その狙いは分かるものの、少々登場人物の近くに寄り過ぎた嫌いがある。彼らが抱える隠された苦悩に同情を寄せ過ぎて、シュールな味が出てこないのだ。限られた空間、当然人間同士の距離は近くなる。それなのに、それがゆえ、難しくなる人間関係の歪さに皮肉を感じるほどの動きが見えてこない。単純に宇宙で話を語る、それだけの光景しか広がらない。

 勿体ない。パトリック・ウィルソン演じるゲイの艦長の常に苛々した振る舞いも、新米のリヴ・タイラーが感じる疎外感も、マット・ボマー演じる機械工が繕う愛情も、どれもこれももっと怪物的に膨らませられる要素だ。敢えてドラマを作らない選択をしたとしても、感情を刺激することを遠慮する必要はない。

 クライマックスに起きる出来事は「マグノリア」(99年)における“カエル”のようなものだろうか。それぞれが我に返り、それぞれの問題を己の身体にすとんと落とし込む。ただ、ここもまたうねりに乏しい感は拭えない。ギリギリの現実感の意味がずれているような気がする。





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