プリデスティネーション

プリデスティネーション “Predestination”

監督:マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ

出演:イーサン・ホーク、セーラ・スヌーク、ノア・テイラー

評価:★★★★




 時間旅行が絡んだSF映画のややこしさは「LOOPER ルーパー」(12年)が極めたかと思われたが、どっこい、『プリデスティネーション』はさらにその上を行くややこしさで頂点に立つ。タイムトラヴェル物のややこしさはもちろん、タイムパラドックスなるものが話の底に横たわるがゆえであるものの、ここではそれを帳尻合わせとは別次元のところまで掘り下げる。

 前半はSF映画とは思えない。バーテンダーのイーサン・ホークにひとりの男が、その数奇な人生を語り始める。「女」として孤児院の玄関の前に捨てられていたこと。孤児院での生活に馴染めなかったこと。宇宙へ行くことを目指したこと。喧嘩が原因でその夢が断たれたこと。雨宿りをしたときにある男と恋に落ちたこと。二度と彼に会えなかったこと。妊娠したこと。産んだばかりの赤ちゃんを誘拐されたこと。そして、出産時に自分に関するある情報を知らされたこと。

 この前半部だけで映画が成立する濃厚さだ。ところが、マイケルとピーターのスピエリッグ兄弟はそれだけで満足しない。波乱万丈の人生の解体を試みる。その際に使用されるのが時間旅行で、ホークは実は時空を超えて活動するエージェントという設定だ。そして、怒涛の後半が始まる。

 徐々に明らかにされる真実の物語には、謎解きの面白さとは別に、毛穴に沁みる不可思議な何かが落とされる。まるで呪われた人生。そこには人間の業の深さが確かに横たわる。全ての粒子が巡り巡って時を形成する。科学的な部分を遥かに超えたところにある、非情の鐘が暗く、高らかに鳴り響く。鶏が先か、卵が先か。メビウスの輪が廻り続ける。

 タイムトラヴェルは出てきても、派手な視覚効果は最小限に留められる。時空を超える装置はギターケースの中に収められていて、レトロスペクティヴだ。画面はスタイリッシュな線ではなく、ハードボイルドなそれが目指される。舞台は20世紀後半に設定され、古風な匂いが隅々にまで行き渡る。ホークはエージェントよりも探偵という呼称がハマり、物語の鍵を握る女はファムファタールの気配を漂わせる。SF世界を構築するパーツに古書の世界を思わせる味がある。

 ホークの安定感もさることながら、ここはやはり、ファムファタールを演じるセーラ・スヌークに注目すべきだろう。化粧や撮る角度によって若き日のジョディ・フォスターに見えたりレオナルド・ディカプリオに見えたり、印象が鮮やかに変わる。決して誰もが認める美貌というわけではないのに、目が離せない。雨宿りから始まる一連の場面には何とも言えない美しさとえぐみが感じられる。そしてそれこそが、映画を象徴する命だ。





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