君が生きた証

君が生きた証 “Rudderless”

監督・出演:ウィリアム・H・メイシー

出演:ビリー・クラダップ、アントン・イェルチン、フェリシティ・ハフマン、
   セレーナ・ゴメス、ローレンス・フィッシュバーン、
   ジェイミー・チャン、マイルズ・ハイザー

評価:★★★




 10年前のウィリアム・H・メイシーは「ファーゴ」(96年)が代表作の面白顔のクセモノというポジションだった。それが今や「シェイムレス 俺たちに恥はない」(11年~)の呑んだくれサイテー男のイメージがあまりに強烈。うっかりこれが素なんじゃないかと邪推してしまうぐらいのハマり具合だから、監督デビュー作『君が生きた証』がそうだとするなら撮れるわけのないデリケートな作品だったのでホッと一安心。

 ビリー・クラダップ演じるやり手ビジネスマンの息子が大学で起こった銃乱射事件で命を落とす。序盤は2年後、湖に浮かぶボートの上で寂しく生きる父親の喪失感を観察する。クラダップの場合、身体の中に怒りが抑えこまれているように見えるのが興味深い。哀しみよりも、怒りが喪失感と密着する。それはきっと、親よりも先に不条理に逝ってしまったことへの怒りなのだろう。そう冷静に分析された描写と思いきや、終幕にはこれがひっくり返る。

 中盤の見せ場はもちろん、音楽演奏場面だ。息子が遺した楽曲を息子と同世代の若者たちと奏でることで、クラダップの喪失感は不思議な癒しを得ていく。知らなかった息子の姿が見えてくる。それはまるで、初めて息子と腹を割って話をするかのような感覚。

 バンドメンバーのひとり、アントン・イェルチンとは本当の親子のように交流する。イェルチンのキャラクターが良い。父親ほど歳の離れたオッサンをバンドに誘う勇気を見せるくせに、ステージ前は緊張で嘔吐、女の子には声もかけられない。クラダップがイェルチンを見守る目が、沁みる。 

 それに単純に音楽が楽しい。最初はクラダップのギター弾き語りだけだったのが、続いてイェルチンとの掛け合いが成立。その次はドラムが加わり音が跳ね始め、ベースも投入されてからは厚みも出てくる。あぁ、音楽とはこうやってできるものなのだと高揚を覚える。イェルチンは初々しく、クラダップは肩の力の抜けたパフォーマンスだ。音楽が流れる背景の躍動感など、実に気持ちが良い(編集が悪くない)。

 あぁ、これで美しくまとまるのかと気を抜いたころに落とされる「事実」は、だから、前述のように、これまで見てきた全てをひっくり返す。クラダップの言葉にならない痛みが露になる。これがきっかけでイェルチンとの仲がぎくしゃくし、クラダップがもう一度事件と向き合うことを余儀なくされるのが、苦しくも、大切な作業になる。

 一見シンプルな物語。しかしその中にはいくつものテーマが放り込まれていて、正直なところ、メイシーがそれらを全てコントロールできているとは言い難い。事を綺麗にまとめ過ぎているし、強引に良い話に持ち込んだところもある。余韻というものをもっと大切にして欲しいとも思う。ただ、それでもメイシーの誠実さは守られる。ラストのクラダップには全てを背負う覚悟が感じられるのだ。





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