フェイス・オブ・ラブ

フェイス・オブ・ラブ “The Face of Love”

監督:アリー・ポジン

出演:アネット・ベニング、エド・ハリス、ジェス・ワイクスラー、
   エイミー・ブレネマン、ロビン・ウィリアムス

評価:★




 何よりもまず、アネット・ベニングを美しく撮ることを優先させた映画、それが『フェイス・オブ・ラブ』だ。タヌキ顔のせいか、ベニングは若い頃から性的な魅力に乏しい。芸達者ではあったけれど、扇情的な個性は皆無に等しい。50代半ばに入った今もそれは変わらず、しかも若さに固執することなく老いを潔く受け入れている。額も目尻も頬も首もしわが深く刻まれている。そのベニングを美しく撮る。

 ベニングの目はこんなにも青かっただろうか。彼女のブルーに合わせたかのように落ち着いた画面の色合い。アイメイクやスカーフの青も含め、静けさを湛えたそのバランス感覚が絶妙。敢えて(だろう)ベニングのしわを大写しにし、なおかつそこに潜む美を切り取る。監督はアリー・ポジン。男というのが意外だ。

 物語が今のベニングに見合ったものだったなら良かったのに。旅先のメキシコの海で最愛の夫を亡くした女、それがベニングだ。喪失感を抱えたままベニングは5年後、亡き夫に瓜二つの男に出会い、彼を追いかけ始まる。狙った線はおそらく、フランソワ・オゾン監督の「まぼろし」(00年)ではないか。

 いちばんの問題はベニングがハリスに「夫にそっくりであること」をさっさと告げない点だ。いくらでも言う機会はあっただろうに、彼女は言わない。いや、言えない。これは恋なのか、ただハリスに亡き夫の姿を見ているだけなのか。ベニングには最初から答えは出ていて、だから言えないのだ。でもそれが男にとって、どれだけ残酷なことなのか。真実を明らかにしないままハリスの心を引き寄せるベニングが、迷惑な女にしか見えない。

 だってそうだろう。美術館で見かけただけの男を、夫と容姿がそっくりというだけで追い回し、偶然を装って近づき、なおかつ心を弄ぶのだ。彼は夫ではない。でもベニングはハリスを夫の代用にすることをやめない。堂々ストーカーに認定して良い。どうしてもハリスと関係を持ちたいなら、全ての事情を話し、正気じゃない自分でも良いかと尋ねてから、だろう。

 どういうわけだか、遂に真実が明るみになり、ハリスばかりか娘や隣人をも傷つけるところをクライマックスに持ってくる。そして1年後、ハリスのベニングへの想いが再び明らかになり…という流れ。重要なのはどう考えても、誰もが真実を知った後にある心の流れだろうに、そこにはまるで触れられない。

 いや、それどころか作り手は単純に、それでも確かにふたりは同じ時を生きていた、とその関係を美化することに懸命だ。そう、結末が実に酷い。実は腐っているのに、見た目は美しいからと飾られている果物みたいだ。皮肉にもベニングはラストショットが最も綺麗に撮られている。





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