余命90分の男

余命90分の男 “The Angriest Man in Brooklyn”

監督:フィル・アルデン・ロビンソン

出演:ロビン・ウィリアムス、ミラ・クニス、ピーター・ディンクレイジ、
   ジェームズ・アール・ジョーンズ、メリッサ・レオ、
   ハミッシュ・リンクレイター、サットン・フォスター、リチャード・カインド、
   ジェリー・アドラー、イザイア・ウィットロック・ジュニア

評価:★




 主人公ヘンリー・アルトマンは渋滞で苛々している。急いでいるのになかなか進まない。その最中、彼が頭の中に思い浮かべるのは、嫌いな物リストだ。ノンストップで出てくる言葉。やっと動き出したと思ったら衝突事故に巻き込まれる。彼の中の何かの糸が切れる。B級映画の快作「フォーリング・ダウン」(93年)を思い出す。あちらはマイケル・ダグラスが主演ゆえにスリラーだったが、こちらはロビン・ウィリアムス主演、もちろんコメディになる。

 アルトマンはある出来事以来、常に何かに怒っている男。一体全体どんな笑いが投下されるのかと思ったら、子どもじみた行動を笑って下さいと語り掛けるばかりで、ちっとも笑えない。病院で脳動脈瘤により余命90分だと告げられた男が何をやるのか。それが、別居妻にセックスを求めて呆れられ、同級生に学生時代に恋人を奪ったと責められ、吃音のある電器屋のオヤジと口論する…という程度のものでしかない不幸。

 心に闇を抱えた男が最後に求めたものは家族だった。そう、男は感傷と接近する。悲劇を言い訳にして他人に辛く当たってきた自分を恥じ、許しを請いに行くも巧くいかない。その姿に憐みの眼差しが注がれる。ウィリアムスの哀しそうな目は、もはや笑いを放棄した方向に向かう。

 途中、こんなセリフがある。「愛しているの一言も、怒らずに言えない」。これは男の抱えているものの複雑さを象徴しているのだけれど、作り手はそこに男の孤独しか見つけられない。そしてもはや笑うしかない、笑って乗り切るしかない、ヤケクソ的暴走を弾けさせる度胸を封印する。代わりに、情緒不安定な女医をぶつけて、簡単に「良い話」に持っていこうとする。情けない。

 大体、アルトマンに辛辣だった妻や兄、息子たちが病気の事実を知った途端に手の平を返して男に理解を示すのが気持ち悪いの何の。人間関係ってそういうものか。血縁に甘えたバカバカしい展開が感傷と入り混じったとき、物語の臭味は絶頂に達する。

 そうか、作り手は「いまを生きる」(89年)や「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」(97年)、或いは「パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー」(98年)等ハートウォーミング路線のウィリアムスが好きなのかもしれない。こういうときのウィリアムスには気をつけた方が良い。演技の巧さと心根の優しさが役柄に過剰に入り込み、退屈な人情を刺激するのだ。『余命90分の男』には極めて乱暴な人間観しか見当たらない。





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