ドム・ヘミングウェイ

ドム・ヘミングウェイ “Dom Hemingway”

監督:リチャード・シェパード

出演:ジュード・ロウ、リチャード・E・グラント、デミアン・ビチル、
   エミリア・クラーク、ケリー・コンドン、ジャメイン・ハンター

評価:★★★




 いきなりジュード・ロウが己の「ムスコ」を語り始める。ムスコは硬さも持久力も抜群の芸術品。類稀なる存在であり、ムスコとして史上初のノーベル平和賞に値するのだという。ロウが興奮の表情と声で長々まくし立てる。結局これはロウがムスコを銜えられた状態での告白だったと分かる。おっと、これまでのロウとは違うぞ。バカバカしくも、なかなかのインパクト。

 『ドム・ヘミングウェイ』はタイトルロールを演じるロウの創り込みが全ての映画だ。エディ・レッドメインやベネディクト・カンバーバッチ、トム・ヒドルストンら英国から次々と新しい才能が頭角を現している。彼らは今までならロウが演じていたような役柄に挑んでいて、なるほどロウが次のステージに移るのも当然かもしれない。ロウは組織のボスの身代わりとなって12年間を刑務所で過ごした男役。その立ち居振る舞いから英国的気品を完全に取り払う。

 一見マッチョな身体つき。しかし、腹は出ているし、尻はタプタプ。ガニ股を強調ながら、肩を揺らして歩く様は、立派なオヤジ。口から出てくる言葉は限りなく下品で、髪型には気を遣っているなんて自虐的なセリフまで放って笑わせる。相棒リチャード・E・グラントとの掛け合いは阿吽の呼吸が楽しい名人芸。疎遠な娘には小さな息子がいて、何とおじいちゃん役というのも意表を突く。これまでとは異なる役柄が楽しくて堪らないらしい。思い切ったロウが新種の生物のような愛嬌を振り撒く。

 この主人公に見合った画面が次々出てくる。赤、黄、青、緑といった蛍光色の強い照明、ご機嫌なロック・ミュージック、主人公に負けない個性を具えたノリの良いキャラクター、女の裸、劇画的処理、バカで汚いセリフ…ポップな画面にドム・ヘミングウェイが愉快にハマる。

 ヘミングウェイの無茶苦茶なドタバタは可笑しい。可笑しいけれど、哀愁も漂う。12年間を刑務所で過ごす代償が影を落とす。別れた妻との死別。娘との距離。世間との隔たり。ヘミングウェイが暴走すればするほどに、その匂いは濃くなる。しかし、哀愁が滲んでも、感傷は拒否される。いや、ヘミングウェイはそれに甘えようとするのだけれど、そういう気配を漂わせるとすぐに、作り手が尻を引っ叩いて彼を鼓舞するのだ。好もしい態度だ。ヘミングウェイにめそめそは似合わない。

 後半に出てくる金庫破りとしての腕が試される件はやや冗長に感じられるものの、全体としては観察記として楽しい。ロウの怪演は彼の堂々たる「オッサン宣言」と見て良いだろう。かつての美青年スターはオッサンと呼ばれる年齢になった自分を認め、新しい可能性を示したのだ。





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