殺意は薔薇の香り

殺意は薔薇の香り “Avant l'hiver”

監督:フィリップ・クローデル

出演:ダニエル・オートゥイユ、クリスティン・スコット=トーマス、
   レイラ・ベクティ、リシャール・ベリ、ヴィッキー・クリープス

評価:★★




 物語よりも映像に見入る。脳外科医の夫とその妻を描く『殺意は薔薇の香り』の舞台はパリの郊外。仕事は順風満帆。息子は独立、可愛い孫も授かり、何不自由ない暮らしを送る彼らの日常の風景が綺麗だ。緑豊かな場所にある豪邸。デザインがいちいち凝った家具や雑貨、趣味の良い食器、カーテン。ワインを飲んで一日を終えるのが似合うスマートな空間。

 見ようによっては空虚でしかないそこに、確かに生活は存在するとばかりに、その匂いを探り出す。夫婦が一緒に暮らしてきた時間や何気ない会話をくすぐり、人生の儚さと共に、映画ではお馴染みの「中年の危機」にも似た焦りを浮上させる。それをおフランス風に、ちょいとばかり気取りながら描く。うむ、フランス映画なのだから、これぐらいでちょうど良い?

 したがってこの映画、何かが起こっているようで、実は何も起こっていない。自宅や診療所に届く薔薇の花束。認知症の症状にしか見えない夫の右往左往。怪しい動きを見せる友人や部下。精神を破綻しながら全てを見透かすかのような妻の妹。謎は散りばめられ、しかし謎に見えたものは意外でも何でもない。物語を追うだけでは感じるところは少ない。だから映像を注視するべきだ。

 夫を惑わせるモロッコから来たという若い女はもっと捻っても良かった。あるときを境によく顔を合わせるようになるふたり。確かに偶然にしては出会い過ぎで、夫がストーカーだと疑うのも当然。果たしてその正体は…。彼女は謎の吸引力となる存在だ。ところが、種明かし後、吸引力は途端に弱まる。キャラクター自体に意外性も面白味もないからだ。

 ダニエル・オートゥイユとクリスティン・スコット=トーマスは余裕の演技だ。とりわけスコット=トーマスはいよいよ怖い女のイメージが揺るがないものになってきた。黙っているだけで、近くにいる人を凍らせてしまうような表情を見せる。スコット=トーマスはオートゥイユの不可解な行動の原因を知ってから案外暴れない。現実性を考えれば妥当。けれど、もっと思い切った行動に出て欲しいというのが本音。

 意味深なラストシーンが良い。真相が明らかになり、収まりの良いところに落ち着いた夫婦関係。しかしそれは、以前とはどこか違っている。もう昔には戻れない。その感じがオートゥイユとスコット=トーマスの視線の行方だけで表現される。





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