やさしい本泥棒

やさしい本泥棒 “The Book Thief”

監督:ブライアン・パーシヴァル

出演:ソフィー・ネリッセ、ジェフリー・ラッシュ、エミリー・ワトソン、
   ベン・シュネッツァー、ニコ・リールシュ、バルバラ・アウア

評価:★★★




 1938年のドイツ、ミュンヘン近郊の田舎から始まる。そう、『やさしい本泥棒』の物語は戦争が影を落とす。母親と別れ、弟に先立たれ、里子に出された少女が、戦時下を駆け抜ける。鍵を握るのは、本だ。字の読めなかった少女が文字を覚え、少しずつ本来の明るさを取り戻していく。

 …という話のはずだけれどしかし、「本が持つ力、芸術が持つ力が心の豊かさに結びつく」という流れにはさほど吸引力がない。少女の活字・本への執着が弱いし、「泥棒」もあっさりした描写に留まる。まっさらな日記にまつわるエピソードは取って付けたように急ぎ足で済まされる。家の地下室や防空壕の中で物語を語って聞かせる件のように、少女と本の関係を念入りに描き込むべきだろう。

 とは言え、それを差し引いても見入る部分は多い。まず、キャラクターが良い。色に乏しい田舎町の質素な暮らし。少女は真ん丸の目に現実を懸命に映し出す。本を愛し、新しい父と母を愛し、友人を愛し、突然の訪問者を愛する。彼女のイメージは白だ。そしてその白のイメージが濁らないのが面白い。戦争の闇に触れ、黒が落とされそうなものなのに、彼女は白のままだ。翳りを帯びることはあっても、白を維持する。

 ソフィー・ネリッセが役柄に合っているのだろう。丸い垂れ目。大きな鼻。ふっくらした頬。くるくる巻いた髪。透き通る肌。昔のギャビー・ホフマンを思わせる。彼女を汚れさせる方法を採らず、その無垢な身体に戦争の残酷さをそのまま映し出す。

 すると周りの人間の心根が見えてくる。愛情深く、優しい父。意地悪に見えて、実は情の深い母。真っ直ぐな心で走る親友。不条理な状況下でも心を閉ざさない訪問者。彼らと少女の掛け合いがしみじみと良い。ジェフリー・ラッシュやエミリー・ワトソン(ややイメルダ・スタウントン化)の芸達者ぶりもたっぷり味わえる。

 暗い空気が漂う中に幻想的な画が入り込むのも見ものだ。地下室を用いた勉強部屋。そこに突如現れる雪だるま。大きく映る文字。灰色を隠す雪景色。アコーディオン。本に囲まれた大邸宅。ジョン・ウィリアムスによるスコア。湖のほとりでの語らい。空襲下の星空。本そのものが絡む場面よりも、よほど心の豊かさの意味を伝える画の数々。

 結末は気に入らない。戦争の残酷とその先に見える希望が無理に強調されてしまい、かえってすっきりしないものが残る。ナレーションが勝手に納得しているのが不可解だ。





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