アイアン・ソルジャー フォートブリス陸軍基地

アイアン・ソルジャー フォートブリス陸軍基地 “Fort Bliss”

監督:クローディア・マイヤーズ

出演:ミシェル・モナハン、ロン・リヴィングストン、マノロ・カルドナ、
   ベンガ・アキナベ、エマニュエル・シュリーキー、フレディ・ロドリゲス、
   パブロ・シュライバー、ダッシュ・ミホーク、オークス・フェグリー、
   ジョン・サヴェージ、ドリュー・ギャレット

評価:★★★




 ひょっとすると女が兵士だと、世間の多くは「女なのに偉い」と感心するのかもしれない。男女平等を叫んでも、どうしてもそういう短絡的な考えは出てくる。それに肉体的な差から生まれる歪も見逃されるべきではない。けれど、問題はそれだけではない。ヒロインは車両隊列に同行して負傷した隊員を治療する衛生兵だ。アフガニスタンでの15か月の勤務の後、彼女は幼い息子と再会する。しかし、息子は自分を忘れ、夫の新しい恋人に懐いている。

 『アイアン・ソルジャー フォートブリス陸軍基地』は帰国してから始まる彼女の戦いを描く。幼い息子とは一から関係を築かなければならない。基地での新しい仕事に就くも、部下は問題児が多い。車の修理工と出会い惹かれ合うも、関係はなかなか深まらない。非常にデリケートな題材ゆえ、心からの敬意と温かな眼差しが慎重に注がれる。

 作り手は現実を甘やかさない。戦地で長い期間を過ごすことで生じる問題を冷静に見つめる。過度な映画的な装飾は避けられ、問題は増えることはあっても減りはしない。やっと上手く人生が運ぶかと思ったら、またすぐに次の障害が横たわる。その苛酷さをじっくり描くことこそが敬意に繋がり、彼女の選択を尊重することでその真摯な心を慈しむ。彼女との距離の取り方が繊細だ。

 かと言って、ヒロイン以外を悪者にするような記号化はなされない。新しい道を歩み始める元夫の息子への愛情やその恋人が抱く幼い命への母性、母を忘れた息子が追う心の傷。誰が悪い悪くないではなく、各々が自らの立場で事に向き合う様が大切にされる。

 ロマンスパートは不要ではないかと思うものの、それも兵士の性欲にまつわる問題を浮上させる手段のひとつとして機能する。戦地でのレイプ未遂問題はやや作為が感じられるものの、ドラマティックに盛り上げようという安易さは感じない。こうした問題の数々に、作り手の軍の現体制への苛立ちがちらつく。辛抱強く語りを続け、問題の重大性を炙り出す。

 ほぼノーメイクで通すミシェル・モナハンが素晴らしい演技を見せる。兵士であり、母であり、女であるヒロインの激情を身体の中に抑え込む。嘆いても叫んでも状況は良くなるわけではない。それを知っている者の呼吸に真実味を添える。終幕にある抱擁に向かって、モナハンは心を込める。作り物ではない何かが画面いっぱいに広がっていく。





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