バッドガイ 反抗期の中年男

バッドガイ 反抗期の中年男 “Bad Words”
手紙 旅行 心の旅 照明 マジック 手品 ショー
監督・出演:ジェイソン・ベイトマン

出演:キャスリーン・ハーン、ローハン・チャンド、ベン・ファルコーン、
   アリソン・ジャニー、フィリップ・ベイカー・ホール

評価:★★★★




 アメリカのスペリング大会はドキュメンタリー映画「チャレンジ・キッズ 未来に架ける子どもたち」(02年)が詳しい。大人でも知らない難解な単語を大勢が見守る中綴れるか否か、子どもたちが競い合う。ここで頂点に立つのはある種のアメリカン・ドリームだ。『バッドガイ 反抗期の中年男』の主人公ガイは40歳にして、このコンテストを荒らす。規則の穴を突いてまんまと全国大会に出場、大人気なく子どもたちを負かしていく。もちろんコメディだ。

 ガイをジェイソン・ベイトマンが演じるのは無理があるのではないか。「モンスター上司」(11年)の好演にもあるように、ベイトマンは十八番は無個性の気弱な男だ。ブラックな笑いが彼方此方で弾ける物語を引っ張るタフなエネルギーとは無縁ではないか。…と思ったのだが…。

 監督デビューを飾るベイトマンはガイの暴走を緩めない。圧倒的な記憶力を具えているにも関わらず、それだけでは勝負しない。弾丸トークで周囲を圧倒。飛び出す言葉の八割は毒舌。壇上で緊張する子どもたちを動揺させる小汚さも全開。初潮ネタはさすがに引くものの、酷過ぎて笑うしかないところまで吹っ切る潔さは正解だ。遠慮がない。

 ただし、演出には抑揚がある。暴力的な描写をスローモーションで処理して見易くしたり、話を一気に転がせるために音楽と編集を見事に呼応させたり、観る者を子どもたちの親の側に立たせて視点を多角的にしたり…。そうした積み重ねの末に、世間から圧倒的に嫌われるガイの心は実は正常であり、彼を頭から非難する者たちこそ(ある意味では)そうするに値する品格はないという事実を突きつける。子どもにとっての親の意味もさり気なく問いかける。

 ガイはインド系と思われる少年チャイタニヤと仲良くなる。少年とオッサンの交流。少年がオッサンにすぐさま懐く。あぁ、ベイトマン、結局ハートウォーミングな方向に流されるのか。…なんてちょっと寂しく思っていたら、どっこい簡単には良い話にはしないから嬉しい。オッサンがオッサンなら、少年も少年なのだ。それゆえのスペリング大会の結末にグッとくる。

 そうなのだ。物語が進むに連れてベイトマンの真実の姿が見えてくるのだ。そしてそれは、ベイトマンのセルフイメージに微妙なところで繋がっている。彼は誰よりも傷ついた男であり、誰よりも普通に憧れる男でもある。だからベイトマンがガイを演じるのは、正しい。

 映画はガイがある人物に向けて書いた手紙を映像として見せたものだと分かる。その苦味がいつまでも舌の上に残る。ベイトマンは下品に突っ走りながら、同時にひとりの男の心の旅を丁寧に綴ったのだ。





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