毛皮のヴィーナス

毛皮のヴィーナス “La Vénus à la fourrure”

監督:ロマン・ポランスキー

出演:エマニュエル・セニエ、マチュー・アマルリック

評価:★★★




 マゾヒズムの語源にもなったレーオポルト・フォン・ザッハー=マゾッホの「毛皮を着たヴィーナス」の舞台化がなされることになり、演出兼脚本の男が、遅れてやってきた謎めいた女のオーディションをすることになる。出てくるのはこのふたりだけ。元々が戯曲であり、当然舞台臭が強くなる。けれど、これが案外気にならない。

 男を演じるマチュー・アマルリックが監督のロマン・ポランスキーそっくりの雰囲気で出てくるのが可笑しい。しかも、この題材でヒロインに起用するのは、己の妻であるエマニュエル・セニエだ。そう、そこかしこにポランスキーの茶目っ気が顔を出し、しかも安定の演出で物語るものだから、舞台臭云々より先に、その世界観に引きずり込まれてしまうのだ。

 「毛皮を着たヴィーナス」の筋をふたりが演じ、その合間にテーマの考察や演技論が挟まれる構成。物語の主人公ふたりと演出家と女優、そしてポランスキーとセニエの関係が二重三重に見えてくる仕掛け。上手いのはハズし方で、虚構と現実の境を丁寧にぼかしながら少しずつ話を展開させる。そのタイミングが名人芸。

 もちろん下手な役者では務まらない。ふたりの力関係が微妙な匙加減で逆転していく様にエロスが漂う。肌の露出ではなく、パワーバランスが揺さぶられることで官能が滲む。ユーモアがなおざりにされないのが良い。アマルリックのきょとんとした目。セニエの全てを見透かす目。女を眺めていると、ふとウッディ・アレン監督の名作「ブロードウェイと銃弾」(94年)のダイアン・ウィーストを思い出す。

 ポランスキーはとりわけセニエの演出に力を入れる。単なるガサツ女と見せかけながら、ただのそれとは異なる表情を出し惜しみなく投下。セニエを正しくいやらしい目で見つめている。艶めかしく美しく、そして淫らに見える構図が次から次へ。下品すれすれの唇。ボリュームたっぷりの睫毛。黒く塗りたくった目周り。想像力をかき立てる後れ毛。自己主張を恐れないエラ。

 終幕の展開がやたら可笑しい。バランスの崩れ方が、愉快に変態的。演出家の妄想ではないかと思わせる隙を残しながら、あっけらかんと全てを放り出すような結末。奇妙な快感がアマルリックの哀れな姿、そしてセニエの奇怪なダンスと共に押し寄せてくるではないか。『毛皮のヴィーナス』、鮮やかにキマる。





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