暮れ逢い

暮れ逢い “A Promise”

監督:パトリス・ルコント

出演:レベッカ・ホール、アラン・リックマン、リチャード・マッデン、
   マギー・スティード、トビー・マーリー、シャノン・タルベット

評価:★★




 雨の中、レベッカ・ホールが立っている。彼女を見つけたリチャード・マッデンが馬車の中に招き入れ、彼女の冷えた手に息を吹きかけて揉み解しながら温める場面がある。咄嗟にマーティン・スコセッシ監督の名作「エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事」(93年)を思い出す。ダニエル・デイ=ルイスとミシェル・ファイファーがやはり馬車の中で互いを求めていた。そして首を傾げる。スコセッシとパトリス・ルコントの差って何だろう。ホンモノとニセモノの違いはどこにあるのだろう。

 『暮れ逢い』はドイツを舞台にした英語作品だけれど、基本、いつものルコント映画だ。すなわちルコントによる片想いの美学、擦れ違いの美学の連打だ。そしてやっぱりか、ルコントのそれは胡散臭くていけない。ルコントは常に官能を念頭に置いて画面を設計するものの、どれもこれも、モテない男が、それでも俺は君を愛し続けると陶酔に耽る画ばかりだ。

 人知れず彼女が弾くピアノの匂いを嗅ぐ。バスタブに浸かる彼女の鼻歌を盗み聞きする。観劇中の彼女のうなじを見つめ続ける。変態の入った(別に悪いことではない。普通だ)想いや言動を過剰に尊び、それどころかこれぞ本当の愛だと悦に入る。馬車場面も、抑え切れないものが溢れ出たというより、本能が変態的に暴走したようにしか見えない(繰り返すけれど、悪いことではない)。もちろん官能からは程遠い。

 ルコントはある意味、ポール・ヴァーホーヴェンに近い人なのではないか。エロスというものの表現に拘る。注目は本人の立ち位置で、ヴァーホーヴェンはその変態性を包み隠さずガンガン突っ走り、ルコントはとことん抑え込む。結果、ヴァーホーヴェンの生み出す官能はバカバカしくも健全なものになり(そう、彼のエロスは裏表がない)、ルコントの官能はむっつりと内向的なものになる。支持したくなるのは前者だ。笑えるから。後者は笑えない。酔い方が気持ち悪く、精液臭まで立ち上がるのが嫌だ。

 それでもホールは艶めかしく奮闘する。絶世の美女ではないのに、物腰が妙にエロティックだ。とりわけ口元の匂い。飛び出す言葉に色がついていると言うか。唇の色がそのまま言葉の色になると言うか。最初ヘンリー・カヴィルを文学方向にした感じに見えたマッデンは、途中から満島真之介にしか見えなくなった。ホールとの相性はイマイチ。ルコントの演出のせいか。

 20世紀初頭のドイツ上流社会の邸の描写は楽しい。壁紙や家具、食器、雑貨等に独特のデザイン性がある。慎み深いという設定のせいか、ホールが地味な衣装で通す分をカヴァーする。





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