おやすみなさいを言いたくて

おやすみなさいを言いたくて “Tusen ganger god natt”

監督:エリック・ポッペ

出演:ジュリエット・ビノシュ、ニコライ・コスター=ワルドー、
   ローリン・キャニー、ラリー・マレン・ジュニア、
   マリア・ドイル・ケネディ、マッツ・オウスダル

評価:★★★




 仕事と家庭の両立…なんてよく聞く言葉で括るのは失礼だろう。『おやすみなさいを言いたくて』の主人公の職業は戦場カメラマンだ。擦れ違い云々以外にも深刻な苦悩が横たわる。それを見逃さないところに好感が持てる。

 第一に命の危険が伴う仕事であること。紛争地域に行けば、どれだけ用心していても、死へ近づくことは明白だ。ゆえに夫や娘たち、家族は安否について気が気ではない。第二に自己責任という言葉がつきまとうこと。基本的に撮りたいもの(撮るべきもの)を撮る。そのためには多少の無茶が必要になる。

 作り手はこの職業の過酷さと意義を認めている。犠牲は大きい。不安は膨大に膨れ上がる。それでも彼らが写真を撮る価値はある。真実を世に知らしめるたった一枚が、世界を動かすことだってある。けれどこれは、多くの人が忘れがちなことだ。とりわけ「事件」になったときは、皆、都合良くそれを忘れる。

 作り手はそれに怒りを感じているようで、ヒロインの家族の苦悩を大変分かりやすいものに置き換える。愛する人が死んでしまうかもしれない…という恐怖だ。もちろん切実な思いではあるものの、それを叫ぶばかりなのはつまらない。とりわけ夫の立ち位置。もう立派な大人なのだ。当然写真を撮る意義も承知だろうに、そこが描かれないがために単に無理解な男に見えてくるのは損だ。

 オープニング場面にハッとする。乾いたイスラムの土地で葬式と思しき儀式が執り行われている。地面に掘った穴に女性の身体が横たわる。それを取り囲む人々。カメラマンはその表情を捉える。すると遺体と思われたものが突然、目を開けるではないか。穴から抜け出した女性は建物の中へと入っていく。そしてそこで彼女は爆弾を身につける。彼女は自爆テロのため、その命を捧げるのだ。この後、カメラマンは仕事と良心の狭間で苦悩することになるのだけれど、そこを深く斬り込んだ方が面白い物語になったのではないか。

 (おそらく役作りで)すっかりやつれたジュリエット・ビノシュが役柄にぴったりだ。特に目周りに滲む疲れが生々しい。けれど、娘役のローリン・キャニーがより目を引く。非常に瞬発力のある演技で、場面によってはビノシュを喰っていたぐらいだ。キャラクター造形も理想と現実の裂け目に堕ちていく感じが悪くない。





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