トム・アット・ザ・ファーム

トム・アット・ザ・ファーム “Tom à la ferme”

監督・出演:グザヴィエ・ドラン

出演:ピエール=イヴ・カルディナル、エヴリーヌ・ブロシュ、リズ・ロワ、
   エマニュエル・タドロス、ジャック・ラヴァレ、アンヌ・カロン

評価:★★★




 カナダの田舎、痩せこけた牛が飼われ、トウモロコシ畑が広がる寂れた農場を、ひとりの青年が訪ねる。交通事故で死んだ同性愛の恋人の葬儀に出席するためだ。同性愛を知らない母親は温かく迎え入れるが、真実を知る兄は冷淡で…。招き入れた他人と家族の物語は物珍しいものではないものの、グザヴィエ・ドランはそこに独特の妖気を立ち上がらせる。『トム・アット・ザ・ファーム』の胆だ。

 ドラン演じる青年トムはナプキンに青インクで書く。「頭の中から哀しみが抜け落ちてしまった」。彼は泣けない。思えばこれは、トムが自身に向けて無意識で書いた、陰鬱なる世界への招待状だった。兄フランシスはトムを暴力を持って支配していくのだ。孤島ではない。荒天でもない。しかし、トムはそこから抜け出せない。見えない何かが彼の足に絡みつき、決して離さない。その感じが良く出ている。

 支配には微かな快感の匂いが漂う。SMなんて言葉では説明できない複雑なもの。トムは暴力により押さえつけられることにより、不思議なことにようやく喪失感と向き合うことになる。ふとした瞬間に思いがけず浮かぶ笑み。暴力がトムの中の何かを解き放つかのような気持ち悪さ。その不可解さが面白い。

 けれどより面白いのは、トムを痛めつけるフランシスの人物像だ。パッと見た感じ、単なるゲイ嫌い。しかし、その心の奥底には秘めたる哀しみが横たわっている。もちろんクローゼットなんて枠では括れない。どうやらそれは幼き頃徐々に積み重なったもののようだ。獣の正体に奥行きがある。

 フランシス役のピエール=イヴ・カルディナルとドランの見た目の対照性も良い。大柄でクマ系のカルディナルと小柄で金髪のドラン。ドランはジョン・メイヤーにスピードワゴン井戸田潤のエッセンスを加えた感じで、立ち姿も含めて美しいとは言い難い(という意見はどうやら少数派)。そのため作品がまとう残酷な匂いに若干の不満があるものの、カルディナルは見事な配役。母のリズ・ロワも不気味さの塩梅が良い。

 難を言うなら、死んだ恋人の人物像がもっと立ち上がっても良かった。彼は満場一致の賛同が得られる善人ではなかった。姿を出さない見せ方に文句はないものの、彼の存在も家族の今に大きな影響を与えたことが察せられるだけに…。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ