6才のボクが、大人になるまで。

6才のボクが、大人になるまで。 “Boyhood”

監督:リチャード・リンクレイター

出演:エラー・コルトレーン、パトリシア・アークェット、
   イーサン・ホーク、ローレライ・リンクレイター

評価:★★★★




 キャスト全員が健康のまま出演できなくなる可能性があった。主役の少年がグレてしまうことが考えられた。資金問題が浮上する危険もあった。話の軌道修正は容易ではない。何より撮り直しを願っても、作品の性質上、それは不可能だ。それでもリチャード・リンクレイターは同じ俳優・スタッフと、12年間を生きることを選んだ。その年毎に作品を完成させる単発シリーズとは事情が違う。これは賭けだ。

 『6才のボクが、大人になるまで。』は舞台裏だけでドキュメンタリー映画が成立しそうだけれど、そこにこだわるのは面白くない。リンクレイターが提示する物語を感じることに専念するのが礼儀だろう。いや、意識などしなくてもそうさせてしまうのが非凡なところで、所謂映画的展開はほぼないに等しいのに、一瞬たりとも目が離せない場面の連続。胸を捉えて離さない、この何か。

 その正体は結局、「時間」という概念に尽きる。この世の中で数少ない誰にでも平等に手にできるもの、それこそが時間で、リンクレイターはその姿を3時間弱の中に切り取る。かけがえのないものであることは誰もが口にする。けれどそれを、「ドラゴンボール」や「ハリー・ポッター」、レディー・ガガ、イラク戦争、大統領選挙等ポップカルチャーや歴史的事件を散りばめ、一人の少年の成長を通して、しかも12年をかけて、映像として浮かび上がらせたフィルムメイカーはリンクレイターが初めてだろう。

 物語は主人公メイソンが6歳のときから始まる。さらさらの髪の毛と大きな鼻、ぷっくりした唇が愛らしい少年が、瞬く間に大きくなっていく。髪型が変わり、声が変わり、すくすくアメリカンな成長を見せるかと思いきや妙に落ち着いた物腰を身につけ、ちょいと生意気で、でも愛を注がれてきた彼は、捻りを利かせつつも心根の優しい青年になる。その過程に潜む時間の誠実さと残酷さ、それが決して見逃されない。

 リンクレイターは時間の大きさを知っている。華美な装飾は彼の機嫌を損ねる。出し抜こうとすれば、途端に表情を失う。それならば、彼を信頼するしかない。リンクレイターはそうしてカメラを回し続けたに違いない。リンクレイターの代表作に「ビフォア」三部作(95年、04年、13年)がある。あちらも時間が真の主役だった。リンクレイターほど時の流れに敏感な監督は今の映画界にはいないかもしれない。

 それにしても俳優たちの容姿がどんどん変わっていく様は、それだけで大きなドラマだ。両親役のイーサン・ホークとパトリシア・アークェットはどんどん老けていく(アークェットは最初からどすこいなウエストなのが惜しい)。それとは逆にメイソン役のエラー・コルトレーンと姉役のローレライ・リンクレイターは若さを弾けさせていく。その対比の味わい。コルトレーンはストレートな美青年にはならなかったけれど、それがまた美しい。顔をじっくり眺めると、スカーレット・ヨハンソンに似ていることに気づく。雰囲気には堕ちたスター、ニック・スタールも入っているけれど…。

 終幕、アークェットが旅立っていく我が子に、あるネガティヴなセリフを放つ。その裏にあるリンクレイターの思いが沁みる。彼の時間に対する向き合い方と観客への信頼が良く表れている。この場面で終わっても良かったくらいに。





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