嗤う分身

嗤う分身 “The Double”

監督:リチャード・アイオアディ

出演:ジェシー・アイゼンバーグ、ミア・ワシコウスカ、ウォーレス・ショーン、
   ヤスミン・ペイジ、ノア・テイラー、ジェームズ・フォックス、
   フィリス・サマーヴィル、ジョン・コークス、スーザン・ブロンマート、
   クリス・オダウド、パディ・コンシダイン

評価:★★★★




 原作はヒョードル・ドストエフスキーの「分身」。しかし匂いとしては、フランツ・カフカ的世界観が濃いと思う人が多いのではないか。主人公は7年も務めているのに存在感ゼロの会社員。顔も名前も覚えてもらえず、想いを寄せる女にも奥手を極める。その彼の前に自分と正反対の性格の、双子以上に似た容姿の青年が現れる。

 その正体を探る必要はない。筋を追いかけることに執着するべきでもない。ただ、奇怪な状況に置かれた主人公を眺め、その不条理に怒り、滑稽味を笑い、哀愁を感じさえすれば、それで良い。『嗤う分身』はそういう映画だ。

 繰り広げられる不可思議な出来事は主人公を動揺させるものの、演出はそれを無視して、速度を緩めない。リズムを作る編集と撮影の呼吸が面白いの何の。おそらく光はほとんどが人工照明。暗がりを照らすような画面が続く。それを独特のペースで切り貼りし、しかもそこに被さるのは日本の60年代歌謡だ。ナニソレ。

 舞台はどこなのか。時代はいつなのか。判然としない。大昔のような、近未来のような、異国のような、宇宙のような、戦時下のような、パラレルワールドのような…とにかく主人公はどこまでも追い詰められる。全ての行動は裏目に出て、人はそっぽを向き、居場所はなくなり…けれど、何なのだ、この快感は。映画空間そのものが強烈な中毒性を発している。

 ジェシー・アイゼンバーグが二役を愉快にこなす。常にサイズの合わないスーツとミスマッチのスニーカーで困惑を続ける。抜群の効果を上げているのが「ソーシャル・ネットワーク」(10年)でも見られた弾丸トークで、そのセリフ回しはキレと愚鈍さが同居するおかしな味わい。追い詰められるほどに輝く。

 ミア・ワシコウスカがヘンテコな世界のミューズとして煌めく。思えばワシコウスカは現実感のある映画よりも謎めいた空間設定の映画で魅せてきた。自己主張するエラ。全てを見透かす眼差し。童話の世界の住人のようなスタイル…なるほど物腰が奇妙に現実感からズレたところにある。

 悪夢は混迷を極める。主人公はその中で真実を見つける。けれど、夜が明ける気配はない。仕込まれた闇は二重三重で、それを晴らすのは無駄な足掻きだというのに。





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