マダム・マロリーと魔法のスパイス

マダム・マロリーと魔法のスパイス “The Hundred-Foot Journey”

監督:ラッセ・ハルストレム

出演:ヘレン・ミレン、オム・プリ、マニシュ・ダヤル、
   シャルロット・ルボン、ミシェル・ブラン

評価:★★★




 車の故障をきっかけに立ち寄った南フランスで、インド人一家が衝動的に家を購入する。「トスカーナの休日」(03年)のダイアン・レインと同じタイプの思い切り方。物語の構造も、どっこい似ている。故国を離れた者が新しい土地で新しい自分に出会うのだ。フィールグッド・ムービーの王道パターン。

 序盤は一家がレストランの経営が軌道に乗るまで、その過程の楽しさで魅せる。何もないところに新しい何かが作られる。それを眺めるのは愉快なものだ。思い込んだら一直線オヤジのオム・プリを中心に、インドパワーがおフランスのお上品な空気を突破する。

 それに待ったをかけるのが、向かいにある一つ星フレンチレストランを経営するヘレン・ミレンで、この二店の対立が中盤の見所になる。インドはプリ、フランスはミレンがボスだ。両者のやり合いが、買収だとか食材の買い占めだとか盗撮と言った幼稚なものなのにがっくり来る。ラッセ・ハルストレムよ、どうしたんだ。騒がしいインドレストランを結婚式と勘違いした客にミレンは言う。「お葬式です。この町の品格が死んだのです」。このウィットを大切にして欲しかった。

 ところが『マダム・マロリーと魔法のスパイス』にはそれ以上の大きな欠点がある。後半、インドファミリーでいちばん料理の腕の良い次男坊を中心にした、「ちょっと良い話」の匂いを前面に出し過ぎるのだ。ミレンは急に物分かりの良い人に変身し、互いを毛嫌いしていた二店が仲良くなり、次男はとんとん拍子に出世してフランスの有名シェフにのし上がる。何を描きたいのか、軸が揺れに揺れるのだ。

 それでも何とかまとめ上げられる。ハルストレムは次男役のマニシュ・ダヤルに感謝しなければならない。頬に膨らみを持つ女顔のダヤルの柔和な表情が、文化と文化が溶け合う瞬間、家族の価値観、人々の距離感を優しく撫でることで、ちょっとした魔法がかかる。頬がピンクに染まるような繊細さを湛えながら。彼方此方に飛ぶ物語をひとつにする。

 そんなわけで鍵はダヤルが握る。けれど、ミレンを眺めるのはもちろん楽しい。ピンと伸びた背筋も辛辣な物言いも、実にカッコイイ。プリのウォルター・マッソー級の大鼻も観る者を幸せにする。そして、ダヤルの恋の相手役を務めるシャルロット・ルボンは、相変わらず20年前のウィノナ・ライダーに見えるのだった。





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